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動揺 9
「まぁ、発情云々は置いといて、何か悩みがあるんなら聞きますよ。あのクラスに手を妬いているんでしょう?」
二人の様子を微笑ましく思いながら見ていると、コホンと一つ咳ばらいをしてから増田が怜旺に向き直る。
「あ、いえ。クラスは今のところだいぶ扱いやすくはなって来たので問題は無いんです。 まぁ、不登校の子が若干一名いるので、そちらの方がちょっと気にはなってますが」
一人だけまともに出席していない生徒がいるので、まだ多少の問題は残っているものの、他の生徒達は最初に比べれば随分とマシになった方だった。
「あぁ、上城央ですか。一年の時には真面目に通ってたんですけど……」
「クラスの生徒から不登校に椎堂が関わっていると聞いて、椎堂本人に直接確認を取りたいんですが、情けない話どうやら避けられてるみたいでして」
「避けられてる? あの椎堂にですか?」
「ま、まぁ……」
怜旺が曖昧に言葉を濁すと、増田は顎に手を当ててしばし考えるような素振りを見せた。
何か可笑しなことを言ってしまったのだろうかと不安が過る。
「珍しいっすね。教師なんかクソくらえ! って感じのヤツなのに。でも、おかしいな。俺の授業ん時はちゃんと教室に居ましたけど」
やっぱり。ここ最近、他の教師たちからも圭斗が連日真面目に教室に居るから驚いたと言う話をよく聞くようになった。
教室に居るだけで驚かれるってどんだけだよとは思ったが、逆に何故自分の授業だけ出ないのかと不思議でしょうがない。
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