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動揺 10

「まぁ、アイツの事だからただの気まぐれなんじゃないっすか? アイツ、休み期間中に補講受けなくていいように自分でちゃんと把握してるって話だし」 「そこなんです。不可解なのは」 専門教科を受け持つ自分の授業は、特殊カリキュラムが組まれているので数日休んだだけでも単位数が足りずに補講の対象になる。 計算高い圭斗がそれを知らないはずが無いのに、なぜ……? 「去年の出席率はきちんと専門科目だけは授業に出ていたようですし、わからないんです」 夏休みにわざわざ二人きりで授業を……? は! もしかしたらその後教室で……!? (って、馬鹿か俺は……。なに考えてるっ) 一瞬頭を過った不埒な妄想を慌てて頭を振って打ち消そうとした。 落ち着け怜旺。いくらなんでもそれはないだろう。冷静になれ―――。こんな恥ずかしすぎる考えをするなんて何を考えてるんだ! 一人であたふたして百面相する怜旺を鷲野は呆れた様子で眺めていたが、ふとある事に気付いたらしく首を傾げた。 口を開こうとした和樹の口を増田が大きな手でバフっと塞ぐ。 余計な事は言うなとばかりに小さく首を振る増田は、何か悟ったような表情で怜旺を見ていたが敢えてそこには触れずに、話題を逸らす事にしたようだ。 「でもまぁ、わからないことを考えるより、気になるなら上城の家に行ってみたらいいんじゃないですか?」 「え?」 「家庭訪問。まだ行ったことないんでしょう? 椎堂に話を聞いたとして、アイツが素直に話してくれるとも思えないし、上城から直接聞いた方が早い」 「確かにそうですね」 そんな単純な事に何故今まで気付かなかったのだろうか。 増田の言うとうり圭斗に確認を取るより家庭訪問する方が先じゃないか。 「そうします。ありがとうございます」 「いやいや、頑張ってください」 ニッコリと爽やかな笑顔で応援され、怜旺は力強くうなずいた。

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