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黒歴史と家庭訪問 3

上城親子が獅子谷家の隣に引っ越してきたのは、怜旺が16歳の時。入れ替わりの激しい市営団地で、未だに残っている数少ない住人だ。 央は当時まだ小学生1年だった。その頃にはもう素直にはなれなくなっていた怜旺は引っ越しのあいさつに来た母親の足元で隠れるようにしてこちらの様子を窺っている子供を見下ろして、何となくムカついて睨みつけたものだ。 時々、この団地とは不釣り合いな位身なりのいい子供と遊んでいる姿を目撃することはあったが、煙草をふかしながら遠巻きにそれを眺めているだけで自分から話しかけることは無かった。 「お母さんは、央君が不登校になった理由をご存じですか?」 「いえ。あの子、何も話してくれなくて……」 「そうですか」 それはそうだろう。おかしな動画を無理やり撮影され脅されたなんて、親には言えないし絶対に知られたくない筈だ。 けれど、母親だって黙って不登校を受け入れているわけでは無いらしい。 息子と一度じっくり話し合いたいと何度も説得を試みたのだが、結局彼が応じる事はなく、ならばと直接学校まで足を運んだのだが、当時の担任は既に精神を病み、休みがちで会う事は適わず他の先生に何があったのかと訊ねてみても、「わからない」と言われるのみだったのだと言う。 学校の対応にも問題があるように思うが、校長はこの事実をどこまで把握しているのだろう? 自分だって、都築に教えて貰わなければ央の不登校の原因が何なのか知る術は無かった。 だが、知ってしまった以上放置しておくわけにもいかない。 「せっかく、圭ちゃんと同じ高校になれたって喜んでたのに……」 「圭、ちゃん?」 聞きなれない呼び名に首を傾げる。高校全体で圭が付く人物が何人いるかは知らないが、怜旺が受け持つクラスで圭が付く人物は一人しかいない。

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