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男の約束 4
翌日、学校が終わると怜旺はその足で、学校からそう離れていない場所にある老舗のゲームセンターへと足を運んでいた。
駅前の大通りを抜け、一歩路地裏に入ればそこはもう別世界だ。
昼でも狭くて薄暗い通りには、いかにもな看板が立ち並び、外国人向けのバーや風俗店などが軒を連ねている。
そこかしこで煙草の匂いが漂い、まだ明るい時間帯だと言うのに柄の悪い男たちが闊歩し、女を連れてホテルに入って行く様が見える。
すれ違う人々は皆一様に、この場に不釣り合いな格好をした怜旺の姿をチラチラと盗み見ては怪しげに眉をひそめているが、怜旺はそれを意に介さず、目的地に向かってズンズンと歩いていく。
「まさかまた、この場所に来る日が来るなんて――」
煤けて年季の入った看板も、治安の悪い雰囲気も、あの頃と全く変わらない。もう二度とこの店に来ることなんて無いと思っていたのに。
思わず苦笑しつつ、目の前に立ち塞がる錆びついた鉄の扉を押し開けて中に入るなり、怜旺は一瞬顔を顰めた。
薄暗い照明に、辺り一面に充満するたばこの匂い。中に居る男たちは新参者の怜旺の姿を確認するなり、気だるげな視線を上げてジロリと睨みつけてくる。
こういう治安の悪さは何時の時代も変わらないな。
なんて呑気な事を思いつつ店内を彷徨っていると、煙草を口に咥えながらメダルゲームに興じている目的の人物を見付けた。
「よぉ、こんな所でなにやってんだ? 椎堂」
「……っ、なんでアンタがここに居る?」
隣の椅子を引っ張って来て腰掛け声を掛けると圭斗は心底驚いたような顔で怜旺を見る。
「なんでって、お前が俺を避けるから直接会いに来てやったんだろうが」
「……別に、避けてねぇし。自意識過剰じゃねぇ?」
「自意識過剰、ねぇ……。まぁいいや。今日来たのは説教垂れるためじゃない。お前に、別件の大事な用時があって来たんだ」
「んだよ、用事って」
怜旺の言葉に、圭斗の表情が一気に険しくなる。圭斗は一旦手を止めると、面倒くさそうに怜旺の方を向いた。
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