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男の約束6
「なんだ、心配してくれんのか?」
「はぁっ?」
圭斗にとっては予想外の一言だったらしい。間抜けな声を上げたかと思うと、怜旺の頭から爪先まで舐めるように眺めてから、不可解な物でも見るような目で怜旺を見る。
「案外優しいとこあるんだな、お前」
感じたまま正直な気持ちを告げると、圭斗は何か言いたげに二、三度口を開きかけたが、結局何も言わずに口を閉ざしてしまった。そしてボトムに手を突っ込むとポケットから煙草を取り出して火を点ける。深く吸い込んで、溜息と共にゆるりと紫煙を吐き出した。
「……アホくさ」
圭斗はそれだけ言うと、再びメダルゲームに向き合った。
「そういうな。そもそもお前が俺の事避けてなきゃ、俺がこんなとこに来る必要は無かったんだけどな」
「だ、だから別に、俺は避けてなんかねぇって言ってんじゃん……」
「いいや、避けてるだろ。俺の授業とHRだけ綺麗にバックレやがって。気付いてないと思ってんのか?」
「……っせぇな。どうでもいいだろそんな事」
チッと盛大な舌打ちをしてそっぽを向いた圭斗に、怜旺は小さく嘆息して言葉を続けた。
「……なぁ、お前は一体何がしたいんだ? 央が大事にしている物を壊したからって辱めを受けさせるなんて、絶対に間違ってると思うぞ」
「説教なんて聞きたくねぇ」
圭斗は吐き捨てるようにそう言って立ち上がると、怜旺の肩を押し退けて歩き出す。
「なんだ、逃げんのか。まだまだガキだなお前」
「は?」
怜旺の挑発的な言葉に反応して振り返り、苛立たしげな声と共に睨み付けて来る。こんなに安い挑発に乗るなんて、本当に子供だ。
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