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男の約束 8
「……たく、どいつもこいつも……。群れるしか脳の無い奴らばっかで嫌になるな」
「あ?」
「汚い面近づけて来るんじゃねぇよ。気色悪いな! 男同士でベタベタ触ってくんなっての!」
ぼそりと呟くと同時に腰に回った手を振り払い、怜旺は相手に向かって思いっきり頭突きを食らわせてやった。
「ぎゃっ……!」
ゴツンと鈍い音が響き、坊主頭の男が額を押さえてよろめく。その隙を逃さず、身体を捻って背後に回りこむと、後ろ襟を引っ掴んで膝裏に蹴りを入れる。
完全にバランスを失ったそいつの背中を思い切り押してやれば、後ろに控えていた仲間を巻き込み勢いよく床に転がっていった。
「……っの野郎!」
ペッと口に溜まった血液を吐き出しにやりと笑えば逆上した男たちの表情が更に険しくなる。
「なに、笑ってやがる……」
「安心したんだよ。……お前らなんて俺一人で充分だわ」
「てめっ! 上等じゃねぇか、あんま調子乗ってっと――」
「どっかで聞いた事あるセリフだなぁ。つか、全員纏めてかかって来いよ」
「クソッ垂れが! 今言った事後悔させてやる!」
怜旺がそう言い放つと、三人組は怒りに任せて一斉に飛び掛かって来た。
まずは正面から向かってきた黒づくめの鳩尾に一発喰らわせると、そのまま倒れ込んだそいつの頭を鷲掴みにして顔面に強烈な一撃をお見舞いする。
「ぐ、ぁ……っ」
「くそ、てめっ!」
まさか呆気なくやられるとは思ってもみなかったのだろう。仲間をやられて血が上った赤茶色の髪の男が、ナイフを振り回して怜旺に襲い掛かって来た。
「チッ、あぶねぇ!」
「椎堂! 大丈夫だ。手は出すな!」
「……ッ」
咄嗟に止めに入ろうとした圭斗を一喝しとびかかって来た男の腕を捻って地面に引き倒すと、そのまま体重をかけて押さえつける。
「ぐあっ……!」
怜旺はナイフを遠くへ蹴り飛ばし、さらに蹲る男の頭をガッと踏みつけて顔を地面に叩きつけた。
「ぐふっ……!」
男はびくりと大きく身体を震わせると、そのままぐったりと弛緩し動かなくなった。
「……すげ……」
あっという間に数人を倒し、ふぅと息を吐く。昔取った杵柄と言うべきか、案外体はしっかりと覚えているものだ。
怜旺は起き上がると、足元で伸びている男共を踏みつけながら圭斗の元へと歩み寄る。
「アンタ……一体何者なんだ……」
「俺か? 俺は、お前の担任だろうが。何言ってんだ」
「いや、そうじゃなくて!」
困惑気味に瞳を揺らす圭斗に思わず苦笑しつつ、額に滲んだ汗を拭って髪を掻き上げる。
その時、視界の端に長い柄のついた棒のようなものを持った男が圭斗の背後から襲いかかる姿が見えた。
「おらっ!」
「――危ね!!」
「!?」
気付いたら飛び出していた。咄嗟に圭斗を突き飛ばし反動で受け身が遅れた。ガツンと鈍い音と共に後頭部に衝撃が走り、目の前がチカチカと点滅する。
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