83 / 342
きまぐれ 2
何度かコットンを取り換えて、最後に唇の端にそっと当てられる。
「っ……」
ピリッとした痛みに顔を顰め、僅かに引いてしまった顎を捉えられて顔をやや上向きに固定され、キスするような体勢と距離に、頬が熱くなるのを感じた。
「口、開けろよ」
躊躇いながらも大人しく従うと、切れた口の端に軟膏を塗りこみ、圭斗の長い指先がそのまま歯列を割って侵入してきた。
驚いて引っ込めようとした舌を押さえつけられ、そのまま頬の内側に軟膏を塗りつけられる。
圭斗の指が舌に当たって、ついそこを意識してしまった。ざらついた指先が上顎や歯茎の裏に触れ、頬の内側を撫でる感覚に背筋がぞくりと粟立つ。
指の動きに意識が集中させられて、ドキドキと心臓が煩く鳴り響く。息をするのも億劫になりそうな沈黙が二人の間を支配する。
「……んっ」
軟膏を塗り終えて指を引き抜き、ぬるりと唇を撫でられて、鼻から抜けるような声が洩れた。
「なに、感じてんだよスケベ」
「なっ、ち、違うぞ!」
ニヤリと笑われてカッと顔が赤くなった。そんな怜旺の反応が意外だったのか、圭斗は少し驚いた様子でまじまじと怜旺を見つめ、次の瞬間にはプッと吹き出した。
「もしかして期待した? エッロいなぁセンセ」
そんな怜旺の反応を楽しげに見やりながら、圭斗は耳元に口を寄せると低く囁いた。
「そんなにヤりたいんなら、リクエストには答えてやんねぇとな……」
「っ、だ、だから違うって……う、ぁっ」
耳に吹き込まれた吐息の感触に、ビクリと肩が跳ねた。
ともだちにシェアしよう!