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きまぐれ 2

何度かコットンを取り換えて、最後に唇の端にそっと当てられる。 「っ……」 ピリッとした痛みに顔を顰め、僅かに引いてしまった顎を捉えられて顔をやや上向きに固定され、キスするような体勢と距離に、頬が熱くなるのを感じた。 「口、開けろよ」 躊躇いながらも大人しく従うと、切れた口の端に軟膏を塗りこみ、圭斗の長い指先がそのまま歯列を割って侵入してきた。 驚いて引っ込めようとした舌を押さえつけられ、そのまま頬の内側に軟膏を塗りつけられる。 圭斗の指が舌に当たって、ついそこを意識してしまった。ざらついた指先が上顎や歯茎の裏に触れ、頬の内側を撫でる感覚に背筋がぞくりと粟立つ。 指の動きに意識が集中させられて、ドキドキと心臓が煩く鳴り響く。息をするのも億劫になりそうな沈黙が二人の間を支配する。 「……んっ」 軟膏を塗り終えて指を引き抜き、ぬるりと唇を撫でられて、鼻から抜けるような声が洩れた。 「なに、感じてんだよスケベ」 「なっ、ち、違うぞ!」 ニヤリと笑われてカッと顔が赤くなった。そんな怜旺の反応が意外だったのか、圭斗は少し驚いた様子でまじまじと怜旺を見つめ、次の瞬間にはプッと吹き出した。 「もしかして期待した? エッロいなぁセンセ」 そんな怜旺の反応を楽しげに見やりながら、圭斗は耳元に口を寄せると低く囁いた。 「そんなにヤりたいんなら、リクエストには答えてやんねぇとな……」 「っ、だ、だから違うって……う、ぁっ」 耳に吹き込まれた吐息の感触に、ビクリと肩が跳ねた。

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