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ふざけるな!! 2
漏れ出そうな声を必死に抑え、怜旺は圭斗を睨み付ける。だが、圭斗はそんな怜旺の様子を楽しげに見ているだけで、止めてくれる気配はない。
テスト終了のチャイムが鳴るまであと十分。それまで耐えれば、解放だ。
「あっ」
小さな声に気付きそちらを見れば、消しゴムがコロコロと転がってしまったようだった。仕方なく拾い上げようと腰を屈めた瞬間。
あろうことか、ローターが更に奥へ押し込まれた。
「……っ! ぅ……っ」
思わず声が上がってしまい、慌てて手で口を押える。
「せんせー、大丈夫?」
「ッ、なんでも、無い」
消しゴムを受け取った生徒の心配そうな声に、そう答えるのがやっとだった。
圭斗を睨み付けたものの、奴はクックックと肩を震わせ笑っているのみで、怜旺の願いを聞き入れてくれそうにはない。
「もう、落すなよ」
「はーい」
幸い、この生徒には気付かれずに済んだようで、内心ホッと安堵しながら怜旺はまた前を向いて歩き出した。
「っ!」
その時ふと、体内を苛んでいたローターの振動がようやく止まった。
流石にもう飽きたのだろうか。圭斗が何を考えているのかなんてさっぱりわからないが、とにかく助かった。
ふと視線を感じて顔を上げると、一番後ろの席に座る圭斗と視線がぶつかった。
「チッ、クソが……」
ほんの一瞬の事だったが、ありったけの敵意を込めて睨み付ける。
そんな態度が、圭斗の嗜虐心を煽ったのかニヤリと口角を上げたと思ったと同時に、ポケットに手を突っ込む仕草が見て取れた。
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