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困惑の先に 6

「あっつ……くそ、なんでこんなに暑いんだよ。クーラー壊れてるんじゃねぇの?」 「クーラーのせいじゃなくて、お前のその暑苦しい髪型のせいだろうが。切ったらどうだ? 似合うかもしんねぇのに」 圭斗の長い髪が頬に当たり、擽ったさに身を捩る。 そっと手を伸ばして、鬱陶しい髪を耳に掛けてやると、圭斗は怜旺の首筋に顔を埋めてスンと鼻を鳴らした。 「うっせ。いいんだよ……別に」 不意に、どこかアンニュイな響きを含んだ声音が耳に届き、怜旺は思わず息を吞んで身体を硬くした。 皆が教室から出て行って二人きりになった途端、教室の隅に無理やり引きずって来られた。カーテンの陰に隠れる様にして抱き締められ、首筋に顔を埋めて何度も匂いを嗅がれる。 汗臭い自分の匂いを嗅がれていると思うと、恥ずかしくていたたまれない気持ちになる。 今日は怒ってばかりだったくせに、一体何なんだ。 相変わらず読めない圭斗の思考に困惑しながら胸を押し返そうと力を込めるが、逆に手首を掴まれて窓際に押し付けられ、そのまま覆いかぶさるように体重を掛けられて身動きが取れなくなる。 股を閉じないようにと片膝を差し込まれいっそう身体が密着して、鼓動が一気に速くなる。 首筋にかかる熱い吐息に、ぞくりと背筋が震えた。 「お前の頭ん中はヤる事しかねぇのか」 せめてもの抵抗に悪態を吐く。すると、圭斗は怜旺を拘束する手を緩め、静かに顔を上げて至近距離で見つめて来た。 「……あぁ、そうだな。そればっかりだ」 自嘲めいた皮肉気な笑みが端整な顔に浮かんだかと思うと、首筋に再び顔を埋めて来る。 「四六時中アンタとヤる事ばっか考えて、何も手に付かねぇ」 「はぁ? 変態かよ」 「男なんて皆そんなもんだろ」 圭斗は、耳朶を甘噛みしながら自分の事を棚に上げてそんな事を言ってくる。 耳の中に熱い舌が差し込まれ、直接響く水音が淫らな気持ちに拍車を掛ける。 「ぅ、んん……っく、そ……っやめっ……」 耳の中に差し込まれた舌が、まるで別の生き物のようにうねって奥を穿つ。ぴちゃぴちゃといやらしい音が響いて、聴覚からもいやらしく責め立てられている気分になり、全身の肌が粟立った。 執拗に舐められ、唇で軽く食む様に愛撫されると腰の辺りが痺れて身体が震える。 「……言ったろ? アンタは俺のモンだって……。アイツには絶対、渡さねぇ」 「な、なに言って……っぅ、あっ、ちょっ待っ……っ」 まるで、自分ではない誰かに嫉妬しているかのような口ぶりに戸惑いながら聞き返すと、それを遮って首筋に噛み付かれた。

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