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困惑の先に 8
「出来もしないことを簡単に言うのはやめろ」
「そんなのやってみなくちゃわかんねぇだろ?」
「は? なに、言――」
「でもまぁ、アンタが学校にいないとつまんねぇし。今日の所は勘弁しといてやるよ」
圭斗は思うところがあったのか渋々身体を離した。すっかり興が削がれたらしく、面倒くさそうにシャツのボタンを留め始める。
「……お前は若いから、ヤリたい盛りなんだろ。その気持ちはわからんでもないがもう少し時と場合を考えろ」
「説教すんなし」
「説教じゃねぇ。大事な事だろ。そんなサルみたいな事ばっかしてると、いつか、いい女に逃げられっぞ」
「別に……女なんか……」
口を尖らせながら口籠り、圭斗はバツが悪そうに視線を逸らすと何か言いたげに二、三回口を開きかけたが、結局口を噤んだ。
「あ~、なんかヤる気失せちまった。……っつか、マジ萎えるわそう言うの」
圭斗はガシガシと乱暴に頭を掻いて、カーテンを開けると服を整えカバンを掴み、部屋を出て行こうとする。
ようやく戻る気になったかと安心したのも束の間。入り口付近で立ち止まり、くるりと怜旺を振り返った。
「……なぁ、あんた女相手にしたことあんの?」
「あ? なんだよ、急に」
突拍子もない質問に思わず眉を顰めるが、圭斗は至って真剣な様子で真っ直ぐに怜旺を見つめている。興味本位や、からかう目的で聞いているようにはとても思えない。
一体どういうつもりでそんな事を聞く?
「むしろ俺が、女を抱けるとお前は思うのか?」
訝しげに問い返すと、圭斗は少し考えてから静かに首を横に振った。
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