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微妙な距離感 8
「たく……そんなフラフラした状態でほっつき歩いて……。怪しいオッサンに掘られでもしたらどうすんだ」
「あー、悪い」
咄嗟に謝罪の言葉を述べてから、何か違うと思った。
いやいや、なんで自分が謝らなければいけない? というか、掘られでも……って、いくら何でもソレは無いだろう。
じゃなくて!
「……もしかして、心配してくれたのか?」
「……別に……っそんなんじゃ…ねぇし!」
率直に尋ねると、圭斗はふいっと顔を背けた。髪の間から見える耳が微かに赤くなっているような気がする。
「ふ、あはは……っ、なんだソレ。お前、意外に可愛いとこあるんだな」
「っ、笑うな! つか、可愛くねぇし!」
顔を真っ赤にして怒る姿は、普段悪ぶっている時よりも幾分幼く見えて、なんだか可愛い。
「……まぁ、どうやってアイツらの誘いを断ろうか考えてたとこだったし、やり方は無茶苦茶だったけど、とりま助かったわ。サンキュな」
「……おぅ」
素直に礼を述べると、圭斗は一瞬驚いたように目をパチパチと瞬かせて、それから照れ臭いのかまたふいっと顔を背けてしまった。
会話が途切れ、沈黙が訪れる。何となく、気まずさを感じ、ソワソワと落ち着かない気持ちで視線を彷徨わせていると、視線の先に一台のキッチンカーが停車している事に気付く。看板に描かれている、ソフトクリームが目に留まり思わず足が其方の方へ向いた。
店じまいをしている最中だったのだろうか? 店主と目が合い、一瞬躊躇ったものの注文をどうぞと促されたのでバニラのソフトクリームを2つ購入し圭斗の所へと戻る。
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