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微妙な距離感 13

「あんたが嫌がることはもうしねぇよ。あの動画だってもう消すから」 「は?」  自ら脅しのネタにしていたものを消すなんて一体、どういう風の吹きまわしだろうか? 「……」 「アンタが消して欲しくないって言うんならそのままにしとくけど?」 「そんなわけ無いだろ! ただ、まさかお前の方からそんな事を言いだすなんて思って無かったんだ……」 「……はぁ。アンタってほんっと、なんも気付いてないんだな? 鈍すぎだろ」 呆れたように息を吐き圭斗が肩を竦める。 「はぁ? この間からなんなんだっ! 言いたいことがあるならはっきり言えよ」 「……好きなんだよ。アンタの事が」 「……え?」 一瞬、何を言われたのかわからなかった。思わず目を見開いて圭斗の顔を凝視する。 好き???  誰が? 誰を……? 好きって言ったのか? コイツが俺を? え、なんで??? 全く以て理解出来ない。だって、この間までそんな素振りは無かったはずだ。 一体いつから? 全然、気が付かなかった。 だって……いや、だけど……。 混乱した頭を必死で整理しようとするも、情報が多すぎて考えが纏まらない。 変な沈黙が流れ、圭斗の長い指が顎にかかり上向かされ視線が絡んだ。 「……ッ」 深い琥珀色の瞳に射貫かれ、言葉に詰まる。 顔が熱い。多分、今の自分は首まで真っ赤に染まっているだろう。 逃げようにもがっちりと顎を固定されてしまっていて、逃げ出せなくて視線を逸らす事も出来ない。 バクバクと心臓が脈打つ音が、触れ合った皮膚越しに相手に伝わってしまっているのではないだろうか? なんて思うくらいに激しく脈打つ心臓のせいで、 なんだか息が苦しい。 あ、と思った時には唇に柔らかな感触があった。 重なり合う皮膚から感じる、圭斗の体温。 下唇を食まれ、ちゅ、と音を立てて吸われる。触れるだけの軽い口付けから、徐々に深くなる口付けに怜旺は堪らず身を捩った。 「お、おいっ!」 「嫌なら全力で拒否ればいいだろ?」 にやり、と笑いながら圭斗が歯列を舐め上げる。ぞくりと怪しい痺れが背中を駆けた。 圭斗の言うとうり、嫌なら全力で拒否すればいい。実際、抱きしめて来る力はそう強くないし、少し力を込めれば簡単に引き離せる。 それなのに何故だろう……なぜか、抵抗する気が起きず、寧ろ――。

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