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思い出4
そんなある晩の事、酒に酔った父親が夜中に帰宅してきた。それ自体はもう日常茶飯事で気にも留めていなかったのだが、身体を弄られ、勃起した父親の陰茎を見せつけられた時は心底驚いた。
嫌がる怜旺を力づくで押さえ込み、無理矢理尻を割り開くと慣らしもしない後ろに固くなった性器を突き立てて来た。
「なぜ、里奈が死んで、お前だけが生きているんだ」「お前が居なければ、里奈が死ぬことは無かったんだ」「お前なんか生まれてこなければ良かったんだ」
向けられた憎悪は子供心にも深く突き刺さり、全てが闇の中に沈んでいくような言いようもない絶望感と悲しみに胸が引き裂かれるようだった。
その日以降、父は怜旺を性欲処理の道具として使うようになった。
思春期の繊細な心は度重なる行為に耐えきれるはずもなく、喧嘩に明け暮れる日々に身を投じるのにそう時間はかからなかった。
幸いにも見た目に反して、喧嘩が強く腕っ節も強かった怜旺は、直ぐに頭角を現し次第に不良仲間の間では一目置かれる存在となっていった。
そんなある日、怜旺は不良仲間から新しくオープンしたバイクショップがあるから見に行ってみようと誘われ、そこで店主の|龍崎 大我《りゅうざき たいが》という男と出会う。
龍崎はとても面倒見がよく、気さくで気取らない性格が人を惹きつけるタイプだった。
両耳に計8個のピアスを開け、左腕から覗く龍の入れ墨が印象的なその男は誰からも好かれる良い兄貴分的な存在で当時荒れていた怜旺も彼にだけは心を開き、あっという間に打ちとけていった。
家庭に居場所が無く、心の奥底で愛情を渇望していた怜旺にとって龍崎は特別な存在で、いつしか彼は怜旺の心を占める存在になっていた。
……無論、当時はそれが恋だなどと考えもしなかったが、今思えば初恋だったんだと思う。
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