134 / 342
思い出 8
鼻の奥がツンとして、喉が焼けるように熱い。
目の奥がジンジンと痛いのは、堪えきれない涙のせいなのか。
「全部……。嘘、だったんだ……」
堰を切ったように溢れだした涙は留まるところを知らず、やがて前が見えなくなって、仕方なく怜旺はバイクを川沿いにある公園の脇に停めた。
「……こんなもの……っ」
やり場のない怒りを、ブレスレットに込め、何度か川に投げ捨ててやろうかと思った。
でも結局、手放すことが出来ずに、唇を噛みしめたまま振り上げた腕を力なく下す。
「……どう、して……。なんで……!」
苦しくて苦しくて、大声で叫びだしたい気持ちを唇を嚙み締める事で必死に堪えた。
欄干に額を擦り付け、ブレスレットを強く握りしめては奥歯をギリギリと噛みしめる。
大我を愛しているのは、自分だけだった。
結局、彼の愛情を信じていたのは自分だけで、大我は自分を利用しているだけだったのだ。
そう思うと悔しくて、悲しくて、やるせなかった。
それでもまだ自分は、どうしようもなく彼が好きだった。
好きで好きで、どうしようもなくて。裏切られたのにそれでも嫌いになり切れない自分自身が情けなくて仕方がない。
行き場を無くした負の感情が頭の中でぐるぐると回り続けてる。
そんな時――。
「――何だよ、お前っ邪魔すんな!」
「いやだっ! ぅ、あっ」
静かな川のせせらぎに混じって不穏な声が耳に響き、手すりにゴリゴリと押し付けていた額を離して顔を上げた。
暗闇で目を凝らして声のする方を辿ってみれば、川沿いにある公園の一角。外灯に照らされたその下で数人の不良と思しき少年が、蹲っている小さな男の子を取り囲むようにして群がっているのが見えた。
ともだちにシェアしよう!