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思い出14

怜旺の噂はヤンキー界隈では有名になり過ぎたようで近頃、やたらとこの手の輩に絡まれることが増えた。恐らく、その筋の者だろう。 「いや、闇に輝く金色の長い髪。女かと見まごうばかりに整った顔立ち。そして、獰猛な瞳と獣を思わせるしなやかな動き。誰も近づけさせない圧倒的な威圧感。アンタに間違いない」 どうやら、何の根拠も無しに自分を探していたわけではなく、きちんと確証を持って探し回って居たらしい。ご苦労な事だと呆れつつ、煙草を吹かしながらさっさと片づけるかとその場に立ち上がる。 「……チッ、何回来たって俺は反社に加担するつもりは無いっつってんだろーが。その耳は飾りか? あぁ?」 大抵の奴は怜旺の眼光に気圧されて尻尾を巻いて逃げるのだが、目の前に立ちはだかる男はどうやらそうではなかったらしい。 「……いい目だ。益々欲しくなった。小さき百獣の王。アンタに損はさせな い。俺達の仲間に加われば、こんな掃き溜めにいる必要なんてない。金も女も、全てを思いのまま好きにできるんだぞ? 悪い話じゃ無いと思うが?」 「金に女……ねぇ? ……わりぃな、生憎どっちも興味はねぇんだ。他あたってくれ」 大体、興味がないものを手に入れてもつまらないだけだ。本当に欲しいものは金なんかじゃ手に入らない。 怜旺が面倒くさそうにシッシと手を振り払うと、男は目を細めて怜旺の事を頭のてっぺんから爪先まで無遠慮にジロジロと見つめてくる。 「なんだよ……」 「まぁ、いい。今日の所は退いてやる。だが俺はしつこいからな。地獄の果てまで追いかけてやる」 「……」 全くもって嬉しくない宣言をしながら再び闇に消えて行ったその男の後ろ姿を見つめながら、怜旺は長いため息を吐いた。 何人来ようが自分は組織に加担するつもりは無いしその意志は絶対に覆ることは無い。 やみくもに逃げ回った所で、いつかはまた見つかってしまうのだろう。その度に相手をするのも煩わしい。 「クソッ」 悪態をつきながら、その場に残された怜旺はフィルターだけになってしまった煙草を地面に落とし踏みつけて火を消した。 正直こんな日が毎日続いて行く事に辟易していた。 同じ年頃の子達は皆、高校生になり青春を謳歌していると言うのに自分は一体何をしているのだろう? 何気なく目をやれば何処からかの帰りなのか、5人ほどのグループがワイワイと楽しそうに談笑しながら歩いていく高校生達の姿が目に映った。 「……高校……か」 勉強なんて興味は無いし、こんな自分が高校生になるなんて到底無理だと諦めていたが、もし……。 万が一あの場所へと紛れることが出来たのなら、今と違った人生が歩めたのだろうか? そんなの夢物語だ。と思う反面、こんなクソみたいな生活から抜け出して、まっとうな学生生活を送ってみたい。という思いが頭を擡げる。 「……戻るか」 怜旺はバイクのエンジンをかけて、自分の巣へと戻って行った。

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