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思い出15

それからというもの、怜旺は高校を受験すべく勉強に打ち込むようになった。 目立つ金髪を黒く染め、出来る限り目立たないように髪も短く切りそろえた。 高校に入りたいと父親に告げた時、お前には無理だとバカにするかと思っていたのだが、意外な事に父はそうか。と短く応えただけで、それ以上何かを言うことはなかった。 唯一の条件は、入学、及び授業料の類は全て自分で出す事。それ以外は基本的に好きなようにしていいと言うので、変に恩を売り付けられるよりはマシかと思うようにした。 もとより、父親に期待など微塵もしていない。自分の事なんて眼中にない事位嫌と言うほど分かっている。 ただ、今自分が居る環境に身を置いていることがどうしようもなく居心地が悪くて……、違う世界を見てみたくなったのだ。 もしかしたら、一般の人間に混じって生活していればいつかは自分の望みが叶えられるかもしれない。そんな淡い希望や打算を胸に怜旺は受験勉強に没頭し、その翌年には見事高校受験合格を果たした。 もっとも、高校、大学へと進学をしても怜旺が心から求めているものは何一つ手に入ることはなかったけれど……。 「――あ~……。ヤな事思い出した……」 バイクのシートから手を離し、怜旺は深い溜息を洩らした。 ずっと心の奥底に仕舞っていた記憶だったのに。 圭斗が突然「好きだ」なんて、おかしな事を言うから。 怜旺は片手で前髪を掻き上げると、困ったように眉を寄せながら黒光りするバイクにそっと、封をするようにシートをかぶせ直した。 あんな記憶を今さら思い出しても、自分にとっていいことなど一つもない。逆に、更に自分の孤独さを感じるだけだ。 「もう……忘れたと思ってたのにな」 チッと忌々しそうに小さく舌打ちをして、ポケットから煙草を取り出すとゆっくりと火を点けた。

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