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なんなんだ

一体全体、どういうつもりなんだ。 あの夜から数週間。夏休みの補講が終わってからと言うもの、姿を見せなくなった圭斗に、怜旺はイラついていた。 あれほどウザいくらいに呼び出して人の事を好き勝手弄んでいたくせに、思わせぶりな事ばっかり言っておいて、連絡すら寄越さないなんてどういうつもりなんだ。 ひょっとしてあれは冗談だったのか?  別に、あんな告白を真に受けたわけでは無いが、あんな事言われてどんな顔して次に会ったらいいんだとか、ずっと悶々とした日々を過ごしていると言うのに。 人の気も知らないで、何なんだ。あの男は。 苛々しながらスマホを何度も開いてみるものの、相変わらず連絡が来る様子はなく。 いっその事こちらから連絡してやろうか?  いやいや、なんで自分から連絡しないといけないんだ。別に用事なんて何も無いのに。 「今日は一段と荒れてますねぇ」 「あ?」 職員室の机の上でスマホと睨めっこしていた怜旺は、背後から聞こえて来た声の方をじろりと睨みつけた。 「獅子谷先生、怖っ どうしたんっすか? 彼女と喧嘩っすか?」 「……チッ、面倒な奴が来やがったな」 嫌そうに呟く怜旺の隣の席に、鷲野が新学期に配る為の書類を纏めながら話し掛けて来た。普段は敬語を使ってある程度自分を押さえつけているが今はそんな余裕はない。 「うわー、めっちゃやさぐれモードっすね」 「……」 本物の馬鹿なのか、物怖じしない性格なのかはわからないが、怜旺が凄んでも鷲野は怯むことなく馴れ馴れしく絡んでくる。

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