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なんなんだ 2
「何か悩み事っすか?」
「……何でもない。いいからあっち行ってろ」
鬱陶しいので追い払うと、鷲野はそれすらも面白そうに笑っていて、つくづく変わってる奴だと呆れてしまう。
何だか毒気を抜かれて、怜旺はため息を吐き頬杖を付くと再びスマホに視線を落とした。
「テスト作りで悩んでるって風でもないし……。明日から新学期だからって緊張するようなタマでも無さそうだし……やっぱ女絡みっしょ? あ……もしかして……アレだ。椎堂と何かあったりして?」
「……ッ」
『椎堂』という名前が出てきた瞬間、怜旺は思わずピクリと眉が跳ねた。ほんの少しの変化だったが、それを鷲野は目ざとく見つけ、にやりと口角を上げる。
「おやおやぁ? もしかして……」
「ち、違う! 別に俺は何とも思ってなんかッ!」
「ハハッ、まだ何も言ってませんって」
「……」
「……冗談ですって」
恥かし紛れに睨み付けると、鷲野は降参とばかりに両手を上げてペロッと舌を出した。
「んで、椎堂と何があったんっすか? 悩み事なら何でも聞きますよ?」
「……いや、いい」
「遠慮しないで下さいよ。一緒に酒を酌み交わした仲じゃないですか」
「どんな仲だよ……。別に悩んでないですし。変な勘違いしないで下さい」
ツンっとそっぽを向いて突き放しても、何か思うところがあるのか鷲野はめげずに食い下がってくる。
(しつこいな)
「……んとに……何でもないって言ってんだろがッ」
「おぉ、やっと獅子谷先生の素が出た」
「あ? あぁ……」
自分で思っていたよりも大きな声が出て、怜旺は思わず片手で口元を押さえて目を逸らす。その様子を見て、鷲野はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら嬉しそうに怜旺の顔を覗き込んだ。
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