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なんなんだ 3
「そんなムキになって猫みたいに毛を逆立てちゃって……。椎堂との間に何かありましたって自分で認めてるようなものじゃないですか」
「……クソッ」
コイツといると本当に調子が狂う。自分の中にある触れて欲しくない部分にまでズカズカと踏み込んで来ようとするこの男が正直苦手だ。
「さぁ、獅子谷先生。白状したら楽になりますよ」
「……」
コイツは絶対に楽しんでやがる。ニヤニヤしやがって。
言いたくない。というよりも、言えない。
そう言えば、コイツの相方はどうしたんだろう? 何時もなら何処からともなく現れては、すかさず鷲野を諫めるのに。
「あぁ、マッスーなら今日は来ませんよ。昨夜、ちょっと盛り上がり過ぎちゃって」
てへっと悪びれた風でもなく、増田が聞いたら絶対怒りそうなことをさらりと言ってのける鷲野。
面白くて話しやすいと生徒達の間で人気の好青年というイメージが先行しがちだが、なかなかどうしてかなりの曲者だ。
「たく、和樹。お前まーた、ちょっかい掛けて……。浮気か? 透にチクってやろ」
「ちょっ! アキラセンセー。浮気じゃないですって! 俺はただ、この間の
獅子谷先生拉致事件の真相が聞きたかっただけっすよ」
「え? あ、あーあんときの……」
「椎堂との事聞きたいのに、獅子谷先生全然口割らないんだもん」
止めに来てくれたとばかり思っていたのに、加治アキラは怜旺の横にある椅子を引くとそこに腰掛け、長い足を組んでこちらに身を乗り出して来る。
「成程。それは俺も気になってたんだ。獅子谷先生、あの後何度聞いてもはぐらかすばっかだもんなぁ」
「……っ」
どこか含みのある笑みを浮かべながらアキラも興味深そうに身を乗り出してくる。
全く、何なんだこの学校は。フレンドリーを通り越して距離感バグってる奴らばかりじゃないか!
「みんな、獅子谷先生と仲良くなりたいと思ってるんっすよ」
「お、俺は別に慣れ合うつもりなんて……」
「まぁ、まぁ、そう言わずに。悪いようにはしませんって」
鷲野は逃がすまいと、怜旺の肩を抱くようにして引き寄せてくる。
抗議の声を上げようとしたが、ちょうど通りかかった担任と目が合ってしまって、下手に騒いで目を付けられるよりはましだと思いとどまった。
今日は厄日か。
怜旺は心の中で舌打ちをした。
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