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もしかして……?
カーテンの隙間から差し込む朝日の光に、怜旺は眩しそうに顔を顰めながら布団から手だけを出すと目覚まし時計を掴んだ。
寝ぼけ眼のまま、まだぼんやりとする頭で画面を見つめると、そこには7:30と言う文字。
一瞬、今日は何曜日だったかとうまく働かない頭を巡らせて考え、新学期だった事を思い出して大慌てで布団から飛び起きた。
「嘘だろ……」
昨夜、無視を決め込むつもりだったのに、結託した鷲野達に飲みに行くから付き合えと半強制的に強烈なオネェのいる店へと連行された。
そこで散々飲まされた挙句に根掘り葉掘り色々と尋問のような質問攻めにあった。
「……最悪じゃないか」
そもそも、人と積極的に関わるつもりなんて無かったのに。何だってこんな目に遭う羽目になったんだ。
こうなることがわかっていたら最初から、職員室で素直に話をした方がまだマシだったかもしれない。
いや、どっちにしても根掘り葉掘り聞かれる事には変わりなかったか。
怜旺は大きなため息を吐いて立ち上がると支度をするべく洗面所へと向かう。
途中、といびきをガーガーと五月蠅いいびきをかいている父親を睨み付けて通り過ぎ、バタバタしながら支度をして適当に洋服を着替えると部屋を出て足早に階段を降りて行った。
何時もなら電車で行くところだが、今日はもう間に合いそうにない。
「……仕方ないか」
出来れば乗りたく無かったが、迷っている暇はなかった。流石に新学期早々教師が遅刻するわけにはいかない。
怜旺は財布とスマホをパンツのポケットに捻じ込むと、車庫からバイクを引っ張り出して跨りエンジンを掛ける。
定期的にメンテナンスだけは欠かさなかったお陰か、懐かしいエンジン音が耳にここちよく響く。どうやら調子は悪くなさそうだと少し複雑な気分になりながらも、少々黴臭くなりつつあるヘルメットを被り走り出した。
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