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もしかして……? 4
「あー、お前達HR始めるぞ。 波多野。あまり貴重品は学校に持ってこないように」
「えっ、あっ、はい! す、すみませんっ」
予鈴が鳴ると同時に教室へ入ると、一言釘を刺してから全員席に着くよう促す。
「えっ、なに、もうそんな時間!?」
「レオ先生おはよー」
ざわつく教室内を眺めていると、改めて騒がしい日常が戻って来たのだと実感する。圭斗の席はやはり空席のままだ。
舌打ちしたくなるのをグッと堪え、怜旺は教壇へと上がると出席簿を開きつつ、馴れ馴れしく下の名前を呼ばれたことに対して思わず眉間に皺が寄った。
「……獅子谷先生と呼べ馬鹿」
「いいじゃん。レオ先生。可愛いし」
「……」
麗華と小春が、ウンウンと頷きながらそんなことを言うが、可愛いのはお前らの頭の中だけだと言ってやりたい。
特に麗華。お前の頭の中は一体どうなっているんだ? 前々から思っていたが、彼女の緩い頭の中にはお花が満開に咲いているに違いない。
「今日から新学期が始まったわけだが、2学期は文化祭や修学旅行と、お前らが楽しい行事がみっちり詰まってる。 ただし! 素行不良のクラスは修学旅行には連れて行かないそうだから、お前ら変な問題起こすんじゃねぇぞ。それと、夏休みボケも早く治せ。明日から早速テストだからな」
赴任当初の荒れた状態から見れば、みんな随分大人しく平和になった方だとは思う。だが、少し目を離せばすぐにバカをして怪我をしてくる生徒や、何かと突っかかって来る生徒がまだいる事も事実。
新学期早々圭斗以外全員揃っていると言うのは素晴らしい事だと思うが、気は抜けない。夏休み中に補講をしっかりと受けた央も今日は、きちんと学校に来れていたようで、それだけでも一歩前進かと怜旺はホッと胸を撫でおろした。
それにしても、圭斗は一体なにをしているのか。さっき駐輪場で会ったはずなのに、教室に居ないとは相変わらず舐めた真似をしてくれる。
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