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もしかして……8
渋々だがそう承諾すれば圭斗はようやく納得したのか、小さな舌打ちを零した後、わかった。と一言だけ残して自分の席へと戻って行った。
「なぁなぁ、さっきの一体何?」
なんて、近くにいる亮雅に話しかけられているのが見え、圭斗が何と答えるのかが気になったが何時までも教室内に留まっているわけにもいかずにそっとその場を離れた。
そして放課後。重い足取りで向かった駐輪場には既に圭斗が居て、壁に背中を預けてぼんやりとバイクを眺めていた。
今日一日だけで何度か似たような光景を見かけた。その度にモヤモヤと胸に引っ掛かりを覚えていたが何時までも逃げ回るわけにもいかない。
「悪い。遅くなった」
「別に……」
態とらしく肩を竦めながら声をかけるが圭斗からの反応はいまいちだった。
横目でチラリとこちらを見て来るもすぐに視線を逸らされてしまい、妙な緊張感が走る。
「で……何だ?」
「このバイク。《《何処で》》手に入れたんだ?」
単刀直入に、圭斗は遠慮ない視線でじっとバイクを見つめながら問うてきた。
やはりその話だったか……。何処で、と言う聞き方に多少引っ掛かりを覚えつつ何と答えようかと迷っていると、圭斗がゆっくりと此方へ視線を投げかけて来る。
その何処か探るような、それでいて苦しそうな瞳に見つめられると何故だか妙に落ち着かない気分になってしまう。お前は一体何を考えているんだ? その視線が、表情が、そのどれもが今まで自分に向けられてきたそれとはどこか違う気がして、怜旺は無意識にゴクリと息を飲んだ。
「知り合いに、貰ったんだ」
「知り合いって……小さき百獣の王の事だろ」
「……」
この場合、何と答えるのが正解なのだろうか。このバイクの持ち主が伝説の男であると言う確信は持っているようだが、口ぶりからして怜旺が本人であるとは気づいていない様子。本当の事を言って幻滅されたくないと言う思いが働き、怜旺は敢えて曖昧に答えて圭斗の出方を窺う事にした。
「それを知ってお前はどうするつもりなんだ?」
「別に。どうもしねぇよ……。ただ、最強と噂されてたあの時代になんで忽然と姿を消したのかが知りたいだけだ」
圭斗は壁に預けていた背中を離すと、バイクから視線を外して此方へと向き直った。
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