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もしかして、11
「さっきからバカ、バカって……言いすぎだろ! そりゃ、大人のアンタからしたら馬鹿みたいに見えるかもしれないけど、初めてなんだよ……。こんなに誰かを好きになったのは」
「なっ……」
圭斗の真剣な眼差しを受け二の句が継げなくなる。 冗談だろうと笑い飛ばすには余りにも圭斗の表情は真剣で、怜旺は顔を逸らす事も出来ずに息を飲んだ。
「で、アンタは? 俺の事どう思ってるんだ?」
「は……っ?」
怜旺が驚いたように目を見開いて圭斗を見上げると不安と期待が入り混じったような表情を浮かべている圭斗の顔があった。
まさかそんな事を聞かれるとは思ってもいなかった。
怜旺は答えに窮して視線を泳がせたが、それを良しとしなかった圭斗に今度は強い力で顎を掴んで上向きに固定され、逸らすことも出来ずに圭斗と視線が交差する。
「答えろよ」
「そ、んなの……」
「言わないとこのままキスするぞ」
「は、はぁ? 意味わかんねぇだろ。大人をからかうのも大概に……」
「これがからかってるように見えんのか? アンタ」
長い指先が唇の縁をゆっくりと、それでいて大胆になぞっていく。本気で嫌ならこの手を振り払うべきなのに何故かその手を振り払えない。
それどころか、熱を持った眼差しに射竦められて思うように身体が動かせず、圭との仕草一つ一つに鼓動が加速して行くのがわかった。
「なぁ……。聞かせろよ……アンタの気持ち」
「ぅ……っ」
そんな事を言われたって困る。自分が目の前のコイツをどう思っているかなんて、わからない。
少なくとも、自分の父親に対するような嫌悪感は無いし、最近では今まで以上に圭斗の事を考えている時間が増えたのは確かだ。
ただ、それがどういう意味合いのモノなのかは出来る限り考えないようにしていた。
それを今、この年下の男に暴かれようとしている。
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