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もしかして 12

「……少し、考えさせろ」 「なんでだよ。簡単な話だろうがっ!」 怜旺の答えに圭斗はあからさまに眉を寄せ不服そうな声を上げて、掴んでいた顎にギリっと力を込めた。 その痛みに怜旺は顔を歪めたが、圭斗は手を離さない。 「お前にとっては簡単な話かもしれないけど、俺にとってはそうじゃない事もあるんだ!」 「意味わかんねぇっての。別に付き合って欲しいとかそう言う事言ってるんじゃないだろ。ただ、俺の事どう思ってるのかを聞きたいだけだ」 「それでも、だ」 いい加減に離せと言わんばかりに力を込めて圭斗の手を振り払うと、怜旺は深呼吸を一つしてから圭斗と向き直った。 視界の端に思い出のバイクが目に留まって唇を強く噛みしめる。 今日はやっぱり、厄日か何かだろうか。 「もう少し時間をくれ……。頼むから」 消え入るような声を漏らしてから深々と頭を下げて、怜旺はその場から足早に立ち去った。 俯いたまま足早に職員室へと戻る途中、尻に入れていたスマホが振動し、着信が来た事を伝える。 どうしてこういう時に限って呼び出しなんてあるのか。 一応、確認しようと立ち止まりスマホの画面に視線を落とす。それは案の定、憎いあの男からのピンクキャットへの依頼の件で、無意識のうちに舌打ちをして怜旺はスマホを握りしめていた。 もう二度と電話に出たくなんてない。 それなのに、この電話を無視しようものなら家に戻ってからどんな罵りを受けるかわからない。 「……行きたくねぇな……」 ぼそりと呟いた言葉は薄暗くなった廊下に思った以上に大きく響く。 これはもう今日は厄日に違いない……。絶対にそうだろう。 盛大にため息を吐きながら人気のない廊下を再び歩きだそうと一歩踏み出した瞬間。 突然、物陰から誰かが飛び出して来る気配がした。 「!? ……な……ッ、ぅ……ッ」 完全に油断していた。突然の事に驚き声を上げると、飛び出して来た人物に腕を掴まれて布のようなもので口と鼻を押さえつけられ一気に意識が遠のいていく。 一体何が起きたのか……。遠くの方で何か声が聞こえてくるが、それを理解するよりも先に怜旺の意識は深い闇の底に沈んでいった。

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