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好きなんだ 2

「なっ、わ……っ馬鹿か!? おまっ、降ろせっ!!」 「っせーな。騒ぐなつってんだろうが。キツいんだろ? 身体……。家まで送って行ってやるから」 「いやいやいやっ! 家までは無理だっ! 自分で歩けるからっ!!」 圭斗本人は真面目に言っているのかもしれないが、27歳にもなって流石にそれだけは勘弁してほしい。こんな格好で歩くだけでも恥ずかしいのに、いくら人気もだいぶ少なくなったとはいえ、通行人だって0じゃない筈だ。 そんな事になったら憤死してしまう。それに、家にはあのバカ親父が待っている。 アイツに彼を会わせたくない。 「流石に、こんな格好じゃ目立つし、近所の目だってあるんだ……わかれよ。ガキが」 あまりの情けなさに圭斗の服を掴んで抗議すると、ほんの一瞬だけ彼の怜旺を見る視線が和らいだような気がした。 「……フッ、あーじゃぁ……休憩がてら、あそこ行くか?」 にやりと圭斗が笑って指差した先は、学校にほど近い位置にそびえ立つホテル「マリン」の看板。 「なんて、冗談――」 「……いい……」 「あ?」 てっきりいつもどうり冷たくあしらわれると踏んでいたのだろう。よほど予想外だったのか、圭斗が驚いたような声を上げた。 「え? マジで?」 「だ、だから……っいいって言ってる。何度も言わせんな馬鹿っ」 自分で言い出したくせに何を今更動揺しているのか。 怜旺は頬を赤く染めながらもそう言い放つと、なんだか居た堪れなくて、顔から火が出そうに熱くて、しがみ付くように圭斗の肩に顔を埋めて隠した。顔を見られたくなかった。今、自分がどんな顔をしているのか分からなかった。 きっと酷い顔をしてるに違いない。そんな顔を見られたくない。 「……あんた、自分で何言ってんのかわかってんのか?」 「うるせぇな……。さっき、アイツらに変な薬盛られてから変なんだ……身体が熱くて疼いて仕方ねぇんだよ」 自分でも矛盾していると言う自覚はある。亮雅に触れられるのはあんなにも嫌だったのに、圭斗の熱に触れてからずっと胸のドキドキが治まらなくて、身体が熱くて仕方が無い。 抱きしめられて彼の体温を感じ、その香りに包み込まれるとどうしようもないくらい胸が苦しくなる。 これがもし、薬の効果じゃないとしたら――? いや、そんなはずない。あるわけない。これは全て媚薬のせいだ。心の片隅で疼く感情を押し込めて、怜旺はそう自分に言い聞かせ、早くしろよとばかりに圭斗の背中を叩いた。

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