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自覚と覚悟
あぁ、自己嫌悪だ。職員室の一角にある自分の椅子に腰掛け、机に肘を付きながら額を押さえた怜旺は深くため息を吐いた。
結局あの後、圭斗にしこたま啼かされて最後には失神するように意識を飛ばした。次に目を開けた時、怜旺が最初に目にしたのは見覚えのない色の天井だった。
頭がぼうっとして、何があったか思い出せず、ベッドの中で気怠い身体を持て余しながらぼんやりと視線だけを動かすと、すぐ隣に圭斗の端整な顔があった。
直ぐに昨夜の事を思い出し、怜旺は舌打ちする。
いくらタガが外れてしまっていたとしても、気を失うほど抱かれてしまったなんて失態は今まで一度も犯した事が無かった。
しかもあんな、自ら望んでねだるような真似をしてしまうなんて、あり得ない。
恥かしくて仕方が無かったのに、目が覚めた圭斗に抱きすくめられて、甘い言葉を囁かれそのまま――……。
そこまで思い出して、怜旺は顔を真っ赤に染めた。
(あああっ!! もう、なんなんだあいつは! くそっ……)
顔が熱を持っているのを自覚しながら、怜旺はガタッと椅子から立ち上がって机に両手を突き項垂れる。
何度も何度も好きだと言われ、腕の中に閉じ込められて身体の奥深くまで暴かれた。
思い出すだけで恥ずかしくて死にたくなって来るのに、心のどこかでそれを喜んでいる自分がいて嫌になる。
(まだ好きだなんて認めた訳じゃないっ。けど……)
困ったことに嫌じゃなかったのだ。圭斗と身体を重ねた事も、圭斗が好きだと言ってくれた事も。
そっと自分の唇に触れてみると、昨夜の情事が頭の中にフラッシュバックして余計に顔が熱くなった。
「……獅子谷先生、今日はまた一段と悩んでるみたいですね」
頭上から掛けられた声に、怜旺はハッと我に返り顔を上げる。すると隣の席に座る先輩教師の増田が苦笑しながら怜旺の事を見ていた。
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