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自覚と覚悟 2

どうやら何度か怜旺を呼んでいたようだが、気付かず考えに耽っていたらしい。 「文化祭のクラスの催し物の件で悩んでいる。……と、言うわけでも無さそうだな」 怜旺の手元にある上下逆さまの資料の束と怜旺の顔を増田が順番に見て来る。 怜旺はそれに誤魔化すように「なんでも無いですよ」と下手くそに笑って見せた。 増田はんー、と首をかしげてきょろきょろと辺りを見渡し、内緒話でもするように耳元で小さな声で尋ねた。 「間違ってたら悪いんですが、椎堂と上手くいってないんです?」 「え、あ……いや……それはどう言う……」 「あれ、間違ってたかな? でも、最近の獅子谷先生ってずっと上の空だし、椎堂と何かがあったのかなと思ったんだけど」 当たっている。けれど肯定し難い内容に怜旺は返事に困ってしまった。 そもそも、なぜ此処に圭斗の名前が出てくるのか。 圭斗との関係を公にした事はないし、学校内で親しくしている姿を見られた記憶も無い。 「もしかして、獅子谷先生、気付いてないです?」 怜旺の戸惑いを察したのか、増田は苦笑して続ける。 「最近椎堂のことよく目で追ってるでしょう?」 「えっ……」 「まぁ、あからさまって程じゃ無いんだけど、多分無意識なんじゃないかな? 獅子谷先生って自分の事となると鈍そうだし」 「に……ぶ……」 何気ない一言が心に突き刺さる。知らず知らずのうちに行動に表れていただなんて! 確かに、最近やたらとヤツの行動が気にかかっていた。 何度もスマホを開いては連絡が来ていないか確認したり、姿を探して、目が合う度にホッとしたり。 姿が見えない時はどこにいるのか気になって仕方が無かったし、見つけるとついつい目で追ってしまっていた。

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