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自覚と覚悟 7

「獅子谷先生は、椎堂の事が好きなんですよね?」 「……っ、それは……その……っ」 他人に改めて言葉にして問われるとなんだか少し気恥ずかしい。 怜旺は視線を外して思わずもごもごと口籠る。 普段ならくだらないと一蹴して終わるのに、此処まで曝け出してしまったあとでは、今更違うと言ったって嘘っぽく聞こえる事が容易に想像出来て、怜旺はカップの取っ手を強く握り締め俯いた。 「先生って、意外と少年っぽい所があるんですねぇ。 先生の新しい一面見れて、少し嬉しかったです」 否定も肯定も出来ずに下を向いた怜旺を見て、増田は表情を崩すと、チラリと時計を確認しゆっくりと立ち上がった。 「でもね。何時までも素直になれないと、いつか後悔する時が来るかもしれませんよ?」 「べ、別に私は……ッ」 怜旺が反論しようとすると、増田はそれを遮る様に伝票をひらひらと振ってレジへ向かって歩き出す。 「あ、ちょっ……!」 「今日は、俺に奢らせて下さい」 爽やかな笑顔でそう言われたら、強引に払うとは言いだせない。怜旺はむむっと眉を顰めて増田を睨み、しかし一つ溜息を吐いてその大きな背中を小走りで追いかけて行った。 *** とはいえ、そんなに簡単に踏み切れるものでもない。 素直に気持ちを伝える勇気なんて、とうの昔に何処かへ置き忘れて来てしまった。 だがしかし、当然のごとく一緒にいて楽しそうに笑い合っているあの二人の過去に触れられたのは、怜旺にとっても大きな収穫で、多少の変化をもたらす要因にはなったと思う。 「――さて。どうすっかな」 参ったなと頭を掻きながら、何気なくスマホを取り出す。 当然だが圭斗からの連絡はない。 その代わりに、父親からの大量の着信が目に留まり怜旺はげんなりと項垂れた。 昨夜は結局家に戻らなかったし、一晩中連絡を絶っていたのだ。相当機嫌が悪いのは目に見えている。 仮に圭斗の事を好きになったとしても、この父親がいる以上自分が幸せになる事など不可能である。 所詮、これが現実だ。 怜旺は深い溜息を吐きながら駐車場へとたどり着き、愛車のバブに跨るとエンジンをかけた。

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