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確かめたい 16
「てめっなに笑ってやがる!」
「はははっ! アンタ……くくくっ、ばっかじゃねぇの?」
「なッ!?」
馬鹿とはなんだ馬鹿とは、と圭斗の態度に腹を立てて蹴り上げようと足を伸ばしたが、当たる寸前で避けられ、逆に素早く怜旺の両手を捕まえシーツに縫い付けるように押さえつけられた。
「あっぶね。たく、教師がすぐキレんの止めろよ。まぁ、そう言うとこもいいんだけど」
「……ッ」
圭斗の目が愛し気に細められ拘束が解かれる。頬に触れる手が熱くて身を竦ませると、宥めるように優しく撫でられた。
「可愛いこと言われたって、そんなん煽ってるようにしか聞こえねぇし」
「べ、別に……煽ったわけじゃ……」
怜旺の背筋がぞくりと震える。欲情を押し込めたぎらついたほの暗い双眸が怜旺を捕らえて離さない。
その視線に鼓動が早くなり、脳内に警鐘が鳴り響く。このまま流されてはいつもと何一つ変わらない。頭ではわかっているのに、どこかそれを期待している自分もいて。
熱い眼差しに吸い込まれてしまいそうになる。まるで時間が止まってしまったかのように見つめ合ったまま、暫く何も言葉を交わせなかったが、不意に圭斗の唇が降りてきた。
貪るような荒々しいキスでは無く、そっと触れてくる唇に思わず目を閉じる。
引き合うように唇を寄せ合い、触れるだけの口付けを繰り返すと、一度離れてまた触れて、優しく啄むとゆったりと吸い上げられ何度も角度を変えて啄まれる。
唇を食まれ、甘噛みされるとぞくりと背筋が震え鼻から甘さを帯びた吐息が抜けていく。
「……んっ、くすぐってぇよ」
「擽ったい、だけか?」
圭斗はそっと唇を離すと、こつりと額を合わせて怜旺の頬を指先で撫でながら愛おしげに見つめた。
先程までの獣じみた視線とは違う、慈しむような優しい眼差しに胸がぎゅうっと締め付けられる。
「……っ、聞くな。バカ」
自分からもキスをしたい衝動に駆られたが、恥ずかしくて言い出せず、悪態を吐きながら何度も触れては離れていく唇を見つめていた。
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