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ドキドキ文化祭 2
そう言えば圭斗は何処へ行ったんだろう? さっき確認した時には教室内に居なかった気がする。真面目に呼び込み……? いや、アイツに限ってそんな事するはずが無いし、となるとサボりだろうか?
それとももう、誰かと一緒に――? そんなの、考えただけで胸がざわつく。
「怜旺センセ、こんな所にいた! センセー大変っ、暇でしょ? ちょっと来て!」
「あ?」
悶々としながら廊下を歩いていると血相を変えた麗華に呼び止められる。ただならぬ雰囲気に、何か事件が起きたのかと眉を顰めると麗華は有無を言わせぬ強引さで怜旺の手を引いて歩き出した。
「お、おいっ? 何があった?」
「センセー、お化け役やるはずだった上城がここ最近の準備疲れと寝不足で倒れちゃったの! 今、手分けして代役の子探してるんだけど、中々見つからなくって……。お願い、お化け役やってくれない?」
「……え?」
それは一大事じゃないか。確かに、最近は怜旺も一緒になって朝早くから夜遅くまで準備で忙しかったし、生徒達も準備を通して纏まりも出来ていた。なにより皆がずっと文化祭を楽しみにしていたのは側で見て来た怜旺が一番よくわかっている。
央の体調不良を見抜けなかったのは自分の責任でもある。
「私たち、ずっと今日を楽しみにしてたの。だから、中途半端に終わらせたくなくて……先生の力を貸して欲しいの」
「バーカ。そう言うのはもっと早く言えっての」
不安そうな顔をしている麗華の頭をポンと叩き、怜旺は目を細めた。
「ありがとう! センセ!!」
何処かホッとしたような、嬉しそうな顔を見るのは悪くない。
「じゃぁ早速、メイクしなきゃね」
「え……めいく……」
何だか嫌な予感しかしない。麗華はいつの間にか手にしていたメイクポーチをちらつかせ、顔を引き攣らせる怜旺の腕を引き控室へと連れて行った。
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