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ドキドキ文化祭3

自分は一体何をしているんだろうか……。 空き教室の一角に当てがわれた控室で、促されるまま椅子に座り怜旺はうんざりと小さく息を吐いた。 「センセーはさ、肌白いし、そのままでもおばけ役出来そうだけどぉ、どうせならもっと雰囲気出したいよね」 ウキウキと楽しそうに言いながら、麗華が失礼しまーすと怜旺の額にかかる髪をそっとピンで止めると、視界が一気にクリアに開けた。i 視界を遮るモノがない状態はなんとなく心許なくて、不安が押し寄せてくる。 「ちょっ……そこまでする必要、」 「必要大ありです。雰囲気は大事よ。センセー……って、あれ?」 怜旺の前髪をピンで留めてメイクに取り掛かろうとしていた麗華だったが、何を思ったか怜旺の顔をマジマジと見つめた後、驚いたように目を見開き動きを止めた。 「うっそ、長い前髪で隠れて全然気付かなかったけど、センセー超絶美人じゃない?」 「……はぁ? んな訳あるか。くだらねー事言ってないで、さっさと済ませろよ」 何を馬鹿な事をと溜息を吐きながら、じろりと麗華を睨むが、もう慣れっこになっているのか怯む事なく頬に長い指が絡んだ。 「えー、絶対美人だよ。肌も私達なんかより全然綺麗だし……こんな美男子見落としてたとか、不覚だったわ」 コレは圭斗が夢中になるはずよね。なんて聞き捨てならない言葉を吐きながら、手際よく怜旺に化粧を施していく。 「……っ、なんでそこで椎堂が出てくるんだ」 動揺を悟られ無いように不満げな声を上げれば、麗華は意味深な笑みを浮かべて目を細めた。

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