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ドキドキ文化祭 9

「あー、疲れた」 「たく、現役の高校生がなにオッサン臭い事言ってんだ」 文化祭を満喫する事数時間。 色々な模擬店を回り、文化祭を満喫し尽くした怜旺は圭斗と連れ立って屋上へと上がると給水塔の壁に凭れて腰を下ろした。 傾きかけた太陽が夕焼け色に周囲を染め、吹き付ける風が少しだけ冷たくて心地良い。 「仕方ねぇだろ。どっか立ち寄るたびにどっかのクラスの女やら男子に捕まったんだからよ」 疲れた、と溜息を吐く圭斗はうんざりした様子で愚痴を零す。 確かにこの容姿だし女子もほっとかないだろう。性格は最悪だが顔だけはやたらと整っているから。 「まぁでも、アンタが殺気立ってくれてたお陰で後半は誰も近づいてこなかったけどな」 「べ、別に殺気立たせてたわけじゃねぇし……」 揶揄うような声色で指摘され、怜旺は膝を抱えてさっき買ったばかりのブドウ飴に噛り付いた。 噛んだ瞬間に果汁が溢れて来て、口の端から溢れて来たそれを手の甲で拭い取る。 甘酸っぱいブドウの風味が口いっぱいに広がって、普段あまり飴やグミ等を食べない怜旺もこれは美味しいと思った。 誰も居ない屋上は妙に静かで、生徒達のざわめきも何処か遠くの方に聞こえているような錯覚を起こしそうになる。楽しかった一日もあっという間。そう思うと、なんだか寂しいような不思議な気持ちになる。 「俺、学生んときはずっとボッチだったし、それでもいいって思ってたんだけどさ……。なんか、意外と悪くねぇな。大人になるとこう言うのって滅多にないから……さ」 当時は心に余裕が無くて、尖ってた部分もあったから無意識に近寄りがたい雰囲気を出していたのだろう。別に友達が欲しかったわけじゃないし一人でいるのが楽だったから、それでもよかった。 今日、初めて学校行事が楽しいと思えたのは、多分……圭斗が隣にいてくれたからだろう。 「サンキュ、椎堂」 「……別に。俺がアンタと回りたかっただけだし」 素直に感謝を伝えてみると、圭斗は照れたように顔を逸らした。その様子が何だか可愛く思えてワシワシと圭斗の頭を掻きまわして撫でた。 「わっ……な、なんだよ」 「いや……やっぱお前、可愛いやつだよなぁ」 普段はイケメンでかっこいい癖に、ふとした時に見せる年相応の一面がとても微笑ましい。 つい笑いを零すと、圭斗は不満げな顔をして手を振り払い徐にポケットに手を突っ込むと、そこから小さな紙袋を取り出し、怜旺の前に差し出した。

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