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ドキドキ文化祭 14
真っ黒な双眸が熱い眼差しで自分を捉え、視線が絡んだ。引き合うみたいに唇を寄せ合い軽いキスが唇に落ちる。
躊躇いがちに圭斗の背に腕を回すと、それに応えるようにして抱きしめる腕に力が籠った。
「……苦しいっつーの」
口を尖らせて抗議すれば、ははっと笑い声が返ってきてそっと腰に回されていた腕の力が緩んだ。
「あ~……本当、もう我慢すんの無理」
ぼそっと呟いたかと思ったら、ぐりっと圭斗の昂ぶりを押し付けられる。太腿に感じたそれは既に硬く熱くなっていて、布越しにでも伝わってくる熱さに思わず息を詰める。
「っ、おい! なに擦りつけてんだよ!」
「ん? いや……だってあんな可愛い事言われて勃たねぇ方がどうかしてるだろ」
「……っ、だからって――っぁ!」
腰に回した手が滑り落ちて来て下着越しにグッと尻の割れ目をなぞられて、ビクンッと身体が跳ねて思わず変な声が漏れる。
「ち、……ちょ、待てって! ここ屋上だぞ! 誰か来たらどうするつもりだ!?」
慌てて手の甲で自らの口を塞いで声を殺しつつ圭斗を押し返すが、そんな事で怯む男じゃない事は嫌というほど知っている。
案の定、笑みを浮かべ耳元に唇を寄せた圭斗はわざと吐息のかかる距離に唇を寄せて妖しく囁き掛けて来た。
「可愛い声聞かれねぇように頑張れよ? センセ?」
「っ、調子に乗んな!!」
「いって!!」
あまりの言い草に恥ずかしさも忘れて思いきり頭突きを喰らわせ、素早く立ち上がってその場から離れる。
勢いが強すぎたのか額を押さえながら蹲る圭斗を見下ろしフンッと鼻を鳴らすと、屋内へと続く扉のドアノブに手を掛け――。
「ちょ、待てって! んだよ、此処まで来てお預けとか酷くね?」
「お前……馬鹿だろ」
はぁっと溜息を吐いて扉に手をかけたまま呟くと、あからさまに不機嫌な表情で不貞腐れた圭斗が不満げな声を上げる。
「さっきから馬鹿、馬鹿って……」
「……シたくねぇなんて、誰が言ったんだ」
「あ?」
「……此処じゃ色々と問題があんだよ。俺の立場っつーモンをちったぁ考えろ。 ――焦らなくても……ちゃんと相手してやるから」
振り向かずにそう言い放ち、再び沸き起こった恥ずかしさを誤魔化すように勢い良く校内へと続く扉を開く。
背後で、ゴクリと唾を飲み込む音が聞えて、扉が閉まる寸前にちらりと視線を向ければ口元に手を充てて顔を赤らめている圭斗の姿が目に映った。
「何呆けてんだよ。――行かねぇのか?」
ポケットに手を突っ込んだまま声を掛ければ、圭斗は蹲っていた体制から勢いよく起き上がり乱れた髪を掻き上げた。
「……アンタ、それ反則じゃね?」
「何がだよ。ほら、さっさと来い」
「あー……もぉ、マジ煽んなっつーの……」
ガシガシと頭を掻いた圭斗は呆れたように溜息を吐くと、立ち上がり怜旺の後に続く。
普段よりも速まる鼓動を落ち着かせるように深呼吸を一つして、怜旺は圭斗が隣に並ぶのを待ってからゆっくりと歩き出した。
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