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初デート10

「イルカショー凄かったな」 「あのイルカ、絶対わざとだろ! ムカつくっ」 「あれはどう見たって、自業自得じゃねぇか」 肩にタオルを掛けてムスッとしている圭斗を、頭からタオルを被った怜旺が馬鹿にしたような目で見る。 イルカのショーは圧巻だった。大きなプールに3頭のイルカが登場し、精度の高いジャンプを披露したり、芸をしたり色々な事をしては観客を楽しませようとしてくれていた。 圭斗はあまり興味が沸かなかったのか、隣からちょいちょい悪戯を仕掛けて来るのでほとんどショーを見ていない。 それを見透かしたかのようなタイミングで一頭のイルカがジャンプした際、圭斗目がけて水を噴射して来たのだ。 当然、被害を被ったのは圭斗だけではなく、隣にいた怜旺も巻き添えを食らってずぶ濡れになった。 ショーの途中ではあったが申し訳なさそうな顔をする係員の人に連れられて乾燥室へ入った二人は、一先ずそこで濡れた体を乾かす事になり、二人とも係員から渡されたイルカのプリント入りTシャツを着て備え付けのベンチに腰掛ける。 「お前がショーを見てなかっただろ。たく、人にちょっかい掛けてくるから……」 「そりゃ、お前が一々可愛い反応するからだろ」 濡れた髪をガシガシとタオルで拭きながらしれっと言う圭斗にむっとして睨みつけるが、鼻で笑われて終わるだけだった。何となく腑に落ちない気持ちになりつつ、ドライヤーで服を乾かしていると、突然後ろから抱きしめられた。 「ちょっ……! まだドライヤー使ってるだろ!」 「これくらい平気だろ」 「全然平気じゃないっ! つか、離せよ」 圭斗はお構いなしに怜旺の首筋に顔を埋め、しきりに匂いを嗅いでくる。 「シャンプーの匂いするな。すげぇ落ち着く」 「そりゃするだろ。さっき髪乾かしたばっかだし……。つか、俺は落ち着かねぇよ」 圭斗の鼻先が耳の裏に当たり、思わず変な声が出そうになるのをグッと堪える。このまま悪戯され続けると、変な気分になってしまいそうで非常に困るのだが……。

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