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初デート14

どの位走っただろうか。気が付けば小高い山の上にある公園に辿り着いていた。 バイクを降りてヘルメットを外すと眼下に美しい夜景と、その先に広がる黒々とした海が一望できた。生憎、薄い雲が広がっており満天の星空とまではいかないが、それでもキラキラと瞬く街の明かりは幻想的だった。 「此処、すげぇ景色いいだろ? 結構穴場でさ、あんたと一度来てみたかったんだ」 そう言って圭斗がヘルメットを外してガードレールに凭れ掛った。そよ風が髪を揺らすと、潮の香りが風に乗って鼻腔を擽った。 どうやってこの場所を圭斗は知ったのか。聞いてみたい気持ちもあったが、それは野暮だと思いなおし口には出さなかった。 「良い景色だな」 「あぁ。なんか、星屑を散りばめた海の上にいるみたいだな」 「なんだそれ」 圭斗の言葉に思わず笑いがこみ上げてくる。でも確かに、眼前に広がるこの景色は星空が海に浮かんでいるかのように見える。煌びやかに光り輝くそれはまるで宝石の様だ。 思えば、こんなにゆっくりと景色を眺めたのは随分と久しぶりだ。海や夜景を見て美しいと思う心がまだ自分にもあった事に驚いたし、この景色を圭斗と二人きりで独占出来ていると言う事実がくすぐったくもあり嬉しくも感じた。 「……やっと笑った」 「え?」 不意に腕が伸びて来て引き寄せられ後ろから抱き留められた。背中に圭斗の熱を感じると、鼓動がドクンと大きく跳ねる。 「あの男。アンタの太客か何かか?」 「……ッ」 さらりと耳にかかった髪を撫でられて、怜旺はびくりと肩を震わせた。

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