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捜索 4
「実際に盗まれたわけではないだろう? 憶測でものを言うもんじゃない。それより、もう一度探しに――」
なんとか話題を逸らそうと、ヘルメットに手を掛けたタイミングで怜旺のスマホが鳴った。ディスプレイを見ると圭斗からだった。
『今、大丈夫か?』
緊迫した声色に、怜旺は思わずスマホを強く耳に押し当てた。嫌な知らせだったらどうしようかと、僅かに手が震えスマホを落とさないように両手で耳に押し付ける。
「あぁ」
『小春の居場所がわかったんだ。住所送るからすぐ来てくれ。俺達も今そこに向かってるから』
スマホから聞こえてくる圭斗の声に、安堵の息が漏れた。取り敢えずコレで一歩前進だ。
手短に用件だけ伝えて切れたスマホに、すぐさま位置情報が送られてくる。場所は新港の埠頭。あの辺りは倉庫が幾つも立ち並ぶ工業地帯だ。
何故そんなところに小春が? 圭斗はその情報を何処で手に入れたんだ? 疑問に思う事は沢山あるが考えている暇はない。
幸か不幸かその埠頭には昔何度も足を運んでいたのでそこまでの道順は頭に入っている。
「おい、椎堂から芹沢の居場所がわかった……って連絡が……」
都築の方を振り向いた怜旺は彼が爪を噛みながらほんの一瞬だけ修羅のような表情を浮かべていたのを見逃さなかった。
都築は圭斗の事が相当気に入らないらしい。だが、自分が好きになった相手を嫌悪感たっぷりに否定されるのはあまり気分がいいものじゃない。
そもそも、いくら昔虐められていたとしても、そんな顔をするだろうか?
どうにも違和感が拭えないが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
小春は自分の意思でそこに向かったのか、それとも事件に巻き込まれたのか。
どのみち、若い女性が一人で居ていい場所じゃない。
「……取り敢えず、乗れよ」
怜旺は小さくため息を吐きつつ、スマホをポケットに仕舞うと、都築にヘルメットを投げて渡し、後ろに乗ったのを確認してから怜旺は再び勢いよくアクセルを回した。
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