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捜索 7

「おい、芹……」 声を掛けようと一歩踏み出した瞬間、背後で人が動く気配がした。 咄嗟に身構え、振り返った瞬間。それまで怜旺がいた場所に黒ずくめの男が飛び込んできた。 やはり、この場に麗華達を連れて来なくて良かった。  ざっと見た限り他に仲間は居ないようだが、もしかしたら何処かに隠れているかもしれない。 「チッ避けたか……随分と勘が鋭いんだな」 「あ? 誰だか知らねぇが、背後から襲いかかるなんて随分卑怯な真似するじゃねぇか。ま、そんなへなちょこパンチ食らったところで痛くも痒くもなさそうだけどな」 「なっ、チビが!! ふざけやがって!」 手っ取り早く倒してしまおうかと鼻で笑えば、安い挑発に乗った男が拳を振り上げながら怜旺に向かって突っ込んでくる。 「あ? 今、なんつった?」 聞き捨てならないセリフに頬が引き攣り、大振りのパンチをギリギリの所で躱す。 男が体勢を崩したタイミングで腹に一発お見舞いしてやれば、グエっと、蛙が潰れたような声を出して男はその場に倒れこんだ。 「おいおい、威勢よく飛びかかってきた割にこの程度かよ。拍子抜けもいいとこだな」 「ぐ、は……っなっ、強ぇ」 「てめえが弱すぎるだけだろ。 つか、お前の目的はなんだ? なんで小春をこんな所に呼び出した?」 腹を抱えて蹲っている男の鳩尾に容赦なく膝を落とし、再び呻く男の髪を掴み上を向かせる。 「さっさと答えねぇと、今度は急所を踏み潰すぞ」 「っっ……っ」 顔面蒼白の男は、少しドスをきかせただけで一気に大人しくなった。 「もう一度だけ聞く。目的はなんだ?」 「ひぃいっ、俺は……っ、ただガキに頼まれただけで……っ詳しいことはなにも……っ」 「ガキ? 誰の事だ?」 男の髪を強く掴み上げ、詳しく聞き出そうと身を乗り出した瞬間。 「えっ、獅子谷センセ? うそ……どうしているの?」 声のする方に視線を移すと、そこには物音に気付いた小春が、信じられないといった表情を浮かべて立っていた。

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