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捜索 9

辛うじて受け身を取ったお陰で頭は打たずに済んだが、勢いよく倒れた所為であちこち擦りむいてしまい、その痛みに思わず顔を歪める。 「たく、今度はなんだ……」 ハッとして顔を上げると、さっきまでいた筈の場所に男はおらず、変わりに奇妙な男が立っていた。夜だと言うのにサングラスをかけ、真っ黒なコートに身を包んでいる。白髪交じりの髪をオールバックにして、髭を蓄えた体格の良い男……。 コートの隙間からチラリと見えた腕には、びっしりとタトゥーが入っている。 さっきの雑魚なんかよりレベルが格段に違う。この男は危険だ。 「……悪いな兄ちゃん。コイツは連れて行く」 男は感情を一切感じさせない声でそう言い放ち、肩に担いだ男を連れてあっという間に暗闇の中に消えてしまった。 「……あいつ……」 その姿を見た瞬間、怜旺は何かに違和感を覚えた。 以前何処かで会った事があるのだろうか? いや、こんな奴に一度でも会っていたら忘れる筈がない。 だが、そう感じさせる何かが確かにあの男にはあ った。……気がする。 だが、今はそんな違和感に頭を悩ませている場合ではない。 痛む腕を庇いつつ立ち上がって小春の方に視線を向けると、そこには彼女に覆いかぶさるようにして倒れ込む圭斗の姿があった。 「……ってぇ……悪い。大丈夫か?」 「椎堂君まで……。ううん、私は大丈夫。それより、庇ってくれてありがとう」 「たく、心配かけてんじゃねぇよ」 圭斗は彼女の上から退くと、彼女に向けてそっと手を差し出した。ぶっきらぼうに言いながら、小春の頭を優しく撫でてやると、彼女は照れたような笑みを浮かべて圭斗の手を取った。 「…………」 そんな二人の姿を見ていたら急に胸がざわつき始めた。 どうしてだろう? 二人を見ているだけで胸の奥が妙に痛いしモヤモヤする。 「たく、いきなり人の事突き飛ばしやがって……」 「悪い。流石に俺一人じゃ二人も庇いきれねぇよ」 確かにそうだろう。小春が無事で取り敢えず良かったと思う反面、チクリと刺すような胸の痛みは強くなるばかりで、怜旺は思わず胸元をギュッと掴んだ。 「取り敢えず、詳しく話を聞かせろ。事と次第によっちゃ警察沙汰も視野に入れないといけなくなるからな」 胸の痛みを誤魔化すように、必死に冷静を装って小春に声を掛ける。小春も事の大きさがようやく理解できたのか、強ばった表情で怜旺を見つめてコクリと首を縦に振った。

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