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疑惑 2

「やっぱ起きてたな」 「!」 気恥ずかしくて、何か文句の一つでも言おうと口を開くが言葉が出るより先に唇を塞がれる。 「……んッ」 文句の代わりに漏れたのは甘く鼻にかかった声。その声に気を良くしたのか圭斗の舌がスルリと口内に入り込み、軽く舌と唇を吸われたかと思うと今度は舌を絡め取られて口付けは深くなる。 「ふっ……ン、んぅ」 息継ぎもままならないほどの激しいキスに頭がぼんやりとしてくる。唇が離れた頃にはすっかり身体から力が抜けていた。 「たまにはこう言う朝もいいな」 チュッと音を立てて頬に唇を落とされると、愛おしげに目を細めて見つめられ心臓がキュッとした。 堪らずふいっと視線を逸らすと、クスクスと笑われて恥ずかしいのと同時にその笑い声にまた心が甘く疼いた。 こういう甘い雰囲気はどうにも苦手だ。自分がどんな顔をしていいのかわからないし、むず痒くてじっとしていられない。 今まで何人もの相手をしたが所詮は客だ。行為が終わればあっという間に熱も冷め、何事も無かったかのように日常に戻っていく。 大河だってそうだ。行為後にベタベタするのは好きじゃないとはっきり言われ、男同士だしそう言うものなのだろうと思い込んでいた。 そう言えば、今何時なんだろうか? 確か今日は火曜日だ。学校に行かなくてはいけない。 学校があると思い出した途端、唐突に現実的な問題が頭を過った。 「つーか、学校……っ、ぅ……っ」 怜旺がガバッと起き上がろうとして鈍い腰の痛みに呻く。 「大丈夫かよ」 「誰のせいだ! 誰の!」 「俺だろ?」 圭斗は悪びれた風でも無くしれっとした顔でそう言うと、額に軽く口付けてくる。 「お前さぁ……あーもーいいや」 何だか怒るのも馬鹿馬鹿しくて溜め息を一つ吐くと、今度は自ら圭斗の胸に顔を埋めた。トクントクンと聞こえる心臓の音が心地よくて瞼を閉じる。 「行きたくねぇな……」 ポツリと口を吐いて出た言葉に驚いた。学校に行きたくないなんて、今まで思った事も無かったのに。 「休んじまうか?」 「ばーか。教師がずる休みとか洒落になんねぇだろうが」 言いながらも離れがたくて、頭をグリグリと擦り付けた。すると、背中に腕が回されギュッと抱き締められる。 顔を上げ、目が合うと引き合うみたいに唇を寄せ合い――。 「ンナァアオ、ニャァ……っ」 「!」 あと数ミリでキスと言うタイミングで、階下から鳴き声がして、続いて扉を掻く音がし始める。どうやらご飯の催促らしい。 「チッ、あんにゃろいい所で……」 「そう言ってやるな。仕方ないだろ。ほら、行こうぜ。レオが待ってる」 ゆっくりと身体を起こし、痛みに顔を顰めつつ立ち上がる。未だに不満げな顔をしている圭斗の額にそっとキスを落として、手を差し伸べた。

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