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疑惑 6
ごくりと唾をのみ込む。
確かに、都築の言動の端々におかしなことがちらほら見受けられるとは思った。でもそれは、まだ子供の言う事だし気にするほどの事ではないだろうとタカを括っていた。
いやまだ決めつけるのは早すぎる。もしかしたらただ単にカバンが床に落ちていてそれを拾っていただけかもしれない。
とにかく、圭斗の財布の在り処だけでも確認してみよう。もしかしたら自分の勘違いかもしれないし。
教卓から圭斗の机に一歩、また一歩と近付いていく。
ドクン、ドクン……と鼓動が早鐘を打った。妙に緊張しているせいか、さっきから五月蠅いくらいに心臓がバクバクと鳴っていて気持ちが悪い。
出来れば自分の勘違いであってほしいと思いながらそっと圭斗のカバンに手を掛けようとしたそのタイミングでポケットの中のスマホが振動を伝えた。
こんな時間に着信なんて、昨夜戻らなかったことを咎める父親からのメッセージだろうか? 気付かない振りをしようかとも思ったが、振動が長く止まる気配が無い。
「……たく、なんだよ」
――椎堂――
画面を見てギョッとした。父親で無かったことにはホッとしたがこんな時間に電話を掛けてくるなんて何を考えて居るんだ。
しかも今は授業中の筈だが、一体何処で油を売っているのやら。
「……もしもし」
『やっと出た』
「出た、じゃねぇよ。お前、今授業中だろうが」
『あれ? そーだっけ。まぁいいや、アンタ空いてるんだろ? 屋上に来いよ』
「は!? 何言って」
『待ってっから。じゃぁな』
相変わらず一方的なヤツだ。人の話も聞かずに自分の用件だけ言って切りやがった。
こっちだって授業が無いからと言って暇なわけじゃない。偶々スマホを取りに来ただけで、やらなければいけない事は山ほどあるのだ。
圭斗のあの様子じゃ、ヤツはまたサボりで間違いないだろう。本当に、何を考えているんだか。
一方的に切れただけで、約束をしたわけではないし、行くのは止めようか。とも思った。
だが、人のカバンを勝手に触るのは気が引ける。 圭斗を此処に連れて来て直接確かめさせた方がいいだろうと思い至った。
「たく、ついでに説教してやる!」
怜旺は小さく舌打ちすると、スマホをポケットに仕舞いカバンに掛けていた手をそっと離し、指定された屋上へと急いだ。
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