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疑惑 8

「やっぱいいな。充電されてるって感じする」 「なんだそりゃ。つか、離れろ暑苦しい」 「んー、もうちょい。こうやってると落ち着くんだよ」 腕の中でもがき、形ばかりの抵抗を示す。説教しようと思って此処に来たのに、これでは本末転倒だ。この際、説教は後回しにして圭斗を教室に連れて行かなくてはならない。 「そう言えば、お前カバン開けっ放しで机の上に置いてただろ。危ないからしまっといたほうがいいんじゃないか?」 「カバン? 別にいいよ。盗られて困るもんなんて入ってねぇし」 「財布とか盗まれたらどうすんだ」 「財布は此処にあるから大丈夫だって」 圭斗が上着のポケットをポンポンと叩いたのを見て、怜旺はホッと息を吐いた。 「どうした? なんか気になる事でもあんのか?」 髪を撫でながら訊ねられて、怜旺は一瞬返答に困った。もしかしたら都築は、圭斗のカバンを漁ったものの何も入っていなくて諦めて出て行ったのかもしれない。それか、圭斗の席だと思ったのは自分の気のせいで、その付近に親しい友人の席があった、とか? 考えてみたら、自分は生徒達の交友関係までは把握できていない。 知らないのに疑って掛かるのはおかしい気がして、なんの気無しに圭斗に訊ねた。 「……なぁ、都築の交友関係について知りたいんだ。何か知らないか?」 「あ?」 途端に圭斗の声が不機嫌に曇る。顔を上げなくても冷たい気配がダイレクトに伝わって来た。 「あんな軟弱猫かぶり男の事なんて知ってどうすんだ」 有無を言わせない冷たい声は恐ろしく低く、これ以上聞けるような雰囲気ではなくなってしまった。 さっきまでとは打って変わった不穏な空気に何も言えないでいると、いきなり首筋に噛みつくようなキスをされた。 「痛っ……! てめっ、何するん」 咄嗟に押し返そうとするが、体重をかけて肩を押されて背中が壁にぶつかった。弾みで握っていたブレスレットが手の平から転がり落ちる。 「俺の前で他の野郎の話なんてすんな」 不機嫌さを隠そうともせず冷たく吐き捨てると、顎を掴み、逃れる事も出来ないまま唇を奪われた。いきなりなんでスイッチが入ってしまったのか解らない。

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