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疑惑 12
怜旺はチラリと都築を見た。俯いていて表情までは読み取れないが、様子が可笑しい事だけはわかった。
十中八九、犯人は都築で間違いはないだろう。だがしかし、証拠が無い。さっき不審な動きをしていたのは見ていたし、すれ違ったがその事を都築は知らないし、もし、都築の荷物からiPodが出て来なければ濡れ衣を着せる教師として、折角纏まり始めたクラスからの信頼が脆くも崩れる可能性だってある。
「波多野。移動教室の前には確かにあったのか? 家に忘れて来たとかは無いんだな?」
「は、はい。電車の中で音楽を聞きながら学校に来たので間違いないです」
「……そうか……。皆を疑いたくは無いが、今から全員の持ち物検査を始めようと思う」
怜旺の決断に、皆が驚きの表情を見せザワつく。犯人の目星はついているが、念には念を入れた方がいいだろう。全員の持ち物検査と言う事にしておけば、都築の荷物も必然的に確認することが出来る。これで、彼の持ち物から波多野のiPodが見つかれば……。
「あ、あの……先生」
怜旺の目論みを遮るように、おずおずと都築が手を上げる。もしかして良心の呵責に耐え切れず自白する気になったのだろうか? 皆の注目を浴びて、都築がふるふると震えながら躊躇いがちに口を開いた。
「僕、見ちゃったんです……」
「あ?」
見た。とは何の事だろうか? 一体なにを言い出すつもりかと思わず眉を顰める。
「何を見たって言うんだ? 都築」
「あの……さっきの時間、忘れ物を取りに教室に戻って来たんです。その時に、椎堂君が波多野君の荷物を漁ってて……」
「うそ……っ圭斗が?」
都築の爆弾発言に、教室中が俄かに騒がしくなった。麗華も小春も信じられないと言った風に目を丸くして圭斗を見る。
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