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疑惑13

成程、コイツはこうやって涼しい顔をして他人に罪を擦り付けるのか。中々豪胆だし狡猾で、ずる賢い。  此処まで来ると清々しいほどの嘘つきぶりである。 「椎堂君、君ってヤツは……。世界で10個しかないレア物なんだ。だから羨ましくて盗ったんだろ!」 「圭斗……本当なの?」 「知らねぇよ。つか、俺iPod持ってっからそんなモン要らねぇし。大体さぁ、限定品持って来てるなんて初めて聞いたっつーの」 恐る恐る尋ねる麗華の言葉を鼻で笑って一蹴した圭斗を波多野は恨みがましい目で睨み付けているし、都築はオロオロとした様子で圭斗の反応を窺っている。 「まぁ、みんな落ち着け。椎堂は犯人だと決まったわけじゃないだろう。証拠もないのに疑うものじゃない。それに、俺は椎堂は違うと思う」 「どうして彼を庇うんですか? 先生は僕より椎堂君を信じるんですか!」 都築から納得いかないと言った目を向けられて、怜旺は返答に困ってしまった。 圭斗がやっていないのは最初からわかっている。だがここに居る全員の前でついさっきまで一緒に居ましたとは言いだしづらい。 お前が犯人だろうがと言ってやりたいが言えないもどかしさに思わず眉間に深い皺が寄る。  圭斗はこの位では動じないらしく、面倒くさそうに肩を竦めている。肝が据わっていると言えばそれまでだが、気持ちがいいほどに堂々としているのが不幸中の幸いだろうか。 この場合、何と答えるのが正解だろうと頭を悩ませていると、圭斗の机の近くに居た加藤がいきなり圭斗のカバンを漁り始めた。 「おい、何勝手に人のカバン触って――……」 「あ……っ! これ、波多野の」 「!?」 加藤の言葉と共に、教室中のざわめきが大きく広がり、一斉に視線が圭斗へと集中する。 流石の圭斗もこれには驚いたのか、何故あるんだと言わんばかりの顔で呆然と立ち尽くしていた。 「ほら、やっぱり……。先生はこれでも椎堂君が犯人じゃないって言うんですか?」 したり顔の都築が怜旺に訴えかけ、生徒達の視線が今度は自分へと集中する。 やっぱりと言う表情をする者、信じられないと言った面持ちで成り行きを見守ってる者、我関せずといった具合で面倒くさそうにしている者、反応はそれぞれだが、一様に怜旺がどう判断するのか、耳をそばだてていることだけは確かだった。

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