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疑惑 14
食えない男だ。そこまでして圭斗を悪者に仕立て上げたいのか。
今この状況で怜旺が真の犯人は都築だと主張しても、誰も信じはしないだろうし、迂闊な事を口には出来ない。だが、このままでいいわけが無い。
この状況を丸く収め、尚且つ圭斗の身の潔白を証明するには一体どうしたらいいのだろう?
左腕にはめ直したブレスレットを無意識に擦りながら、必死に頭をフル回転させて解決策を考えるものの、状況証拠を偽装されている状態では何を言っても説得力に欠ける。
「―――犯人は圭斗じゃねぇよ」
何と答えようかと迷い、口を開きかけたその時。突然、教室の扉の向こうからよく通る声が聞こえて来た。
一斉に視線がそちらに集中する。
ドアに凭れるようにして立っていたのは、なんと亮雅だった。
「さっきの時間ずっと俺がコイツの側に居たんだ。だから圭斗じゃない。カバンに入ってたのも誰かに濡れ衣着せられそうになったからじゃね?」
ツカツカと教室内に入って来た亮雅は、自分の机にカバンを置くと圭斗の隣の椅子に腰掛け、優雅な仕草で足を組んだ。
「な、なぁんだ。そうよね。圭斗がそんな事するわけ無いもん! 亮雅ぁ、来るの遅いよ」
心配したんだから! と麗華がホッと胸を撫でおろし、亮雅の隣の席に腰掛けて彼のわき腹をつつく。
「悪い。クソしてたんだわ」
「うっわ、最悪。そう言う報告要らない!」
張り詰めていた空気が変わるのを感じ、怜旺はひっそりと息を吐き出した。
ただ、盗まれた張本人の波多野は未だに怖い顔をしているし、都築はほんの一瞬だが、物凄い形相で亮雅を睨み付けて舌を打ったのを見逃さなかった。
受け取ったiPodと圭斗を交互に見る波多野の顔は、やっぱり苦虫を噛み潰したように複雑だった。
さて、どうしたものだろうか。 都築は自分が想像していた以上にしたたかで腹黒い男らしい。犯人である可能性は高いが上手い事言ってのらりくらりと交わす可能性だってある。
「……取り敢えず、一人一人話を聞きたい。都築と、波多野。それから、八神、椎堂。放課後俺の所まで来るように」
重苦しい空気の中、怜旺はそう提案するのが精いっぱいだった。
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