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反旗を翻す 5
はぁと溜息を吐き出して、亮雅は気を取り直すように軽く首を揺すってみせた。
「黒服の男……。そうか」
「アイツは絶対あの男に騙されてるんだと思う。なにが目的なのかわからねぇ、けど……もう千尋の遊びには付き合ってらんねえし、俺の大事なダチを犯人に仕立て上げようとするなんて許せねぇ」
「それで、全てを話す気になったって事か」
椅子に深く腰掛け、溜息を吐きながら問えば、亮雅は躊躇がちにコクリと頷いた。
「話はわかった。で、お前は結局どうしたいんだ?」
「え?」
「え? じゃねぇよ。都築の暴走を止めるには、その黒服から手を切らせるしかねぇだろ。 それはまぁ、俺が引き受けてやってもいいが……問題はその後だ。正直、都築のやってる事は犯罪行為のオンパレードだ。黒服が心の拠り所になってるっつーなら、尚更素直に手を切るとは思えないし再犯の可能性だってある。罪は償って貰わねぇといけないから、都築を警察に突き出すことも視野にいれてる。その上で聞きたい……。お前はどうしたいんだ?」
今まで、話を聞く中で思ったのは、亮雅は未だに都築の事が好きなのではないか。と言う事。もう付き合っていられないと言いながらも、いつかは元に戻るのではないかと言う淡い期待を持っているようにも見えた。
その感情には怜旺も覚えがある。状況こそ違うが、亮雅の抱く感情はかつて自分が抱いていたものとどこか似ているようにも思えたからだ。
そして何より、かつての自分と重なる部分があるからこそ、ついつい絆されてしまっている部分もあるのかもしれない。
彼は変わってしまったのだから諦めなければいけないと頭ではわかっていても、心が中々ついて行かず、もしかしたら……。と言う気持ちが燻っているのだろう。
一度好きになった感情を押し殺すのも諦めるのも、けして簡単な事ではない。
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