282 / 342

反旗を翻す 6

「……どうって、言われても……わかんねぇよ」 「そうか。まぁ、大方の事情は分かった。有力な情報サンキュな」 亮雅の頭をくしゃくしゃと頭を撫で回し、怜旺は鞄を掴んで立ち上がった。 「……言いなりになってた自分をあまり責めんな。もし仮に都築の背後にヤクザが絡んでんならお前の手に負える相手じゃねぇ。後は俺が何とかしてやるから安心しろ」 それだけ言って、俯いたままの亮雅を残し部屋から出た。 すると、扉のすぐそばに先に出て行ったはずの圭斗が佇んでいた。 全く、立ち聞きするくらいなら中に入ればよかったのに。素直じゃないなと内心苦笑して、亮雅のフォローを頼むと口を開きかけた怜旺よりも先に、圭斗の方が言葉を発した。 「……やんのか? だったら俺も付き合うけど」 指を鳴らしながら、さも当然と言った風な圭斗に対し、怜旺は静かに首を横に振る。薄々圭斗ならそう言いだすような気はしていた。 でも、これ以上圭斗を巻き込むわけにはいかない。 「いや。今回は俺一人で対応する」 「は? ざけんな! 俺が負けると思ってんのか? ヤクザ相手にビビるわけ無いだろ!」 「違う! そうじゃない!」 「じゃぁなんで……っ」 キッと睨み付けられても反社が関わっている可能性が出てきた以上今回ばかりは譲るつもりはない。 「ガキが安易な気持ちで首を突っ込んでいい相手じゃない事位わかるだろ」 「だからって、あんた一人でどうにか出来る相手じゃねぇだろ! だったら、俺も……っ」 「駄目だ。そもそもまだ情報が少なすぎるし、ヤバい組織が絡んでるかもしれないんだ。その辺のガキの喧嘩とはわけが違うんだ。お前が来ると足手まといなんだよ」 「な……っ、てめっ」 取り付く島もない怜旺の態度に、圭斗が苛立ちを募らせていくのが手に取るように分かった。怜旺だってこんな所で圭斗と喧嘩をしたいわけじゃない。だが、都築の背後に得体の知れないヤクザが絡んでいるとなれば、尚更圭斗を関わらせるわけにはいかない。いや、関わらせたく無いのだ。

ともだちにシェアしよう!