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空回り 2

「……はぁ」 思わず洩れた溜息は、人もまばらになった職員室内に思ったよりも大きく響いた。 圭斗からの連絡が無くなって早3日が経とうとしている。今日も学校には顔を出さなかった。彼は一体何処でなにをしているのだろうか? 鳴らないスマホを何度も眺め、メッセージアプリを開いては躊躇い、閉じる。 ここ数日で何度この行動を繰り返したかわからない。 「アイツ、何時まで臍曲げてるつもりなんだ……」 黒光りするブレスレットに視線を落とし、デスクに肘をついて頬を支えながら溜息交じりに呟く。 「今日はいつにも増して元気ないっすね」 声をかけてきたのは、鷲野だった。顔を上げると、心配そうに此方を見詰める鷲野と目が合う。 「いや、まぁ……ちょっと色々とありまして」 言葉を濁し、視線を逸らす。普段と変わらない対応が出来ているつもりだったが、どこかおかしかったのだろうか?  鷲野は意外と鋭いところがあるから、感づかれてしまうと後々面倒だろうな……。 「どうせまたなんかトラブル抱えてるんでしょうけど、聞いたって答えてくれないんだろうから何も言いいませんが……。どうしてもって時には頼って下さいね?」 「え? あ、あぁ。わかりました」 ちょっと前なら、根掘り葉掘り食い下がって聞き出そうとしてきたのに、今回はやけにあっさりと身を引いたのが少し気にかかった。 けれど、まぁ、ここで食いつかれたところで詳細を話すわけにいかないのだから、助かると言えば助かるのだが。 鷲野はそれきり何も言わず自分の席へと戻って行った。珍しいこともあるものだと思うと同時に、また心配をかけてしまったのだなと申し訳ない気持ちになった。

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