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空回り 4

「……本当に大丈夫だ。ちょっと仕事が立て込んで、寝不足なだけだから」 そう言い返してその場を逃れようとしたが、二人はそう易々と逃がしてくれるような子達ではなかった。 「ほんっと先生って素直じゃ無いなぁ。 本当は圭斗が学校に来ないから寂しいんでしょ」 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、麗華がいきなり核心をついてくる。 「べ、別にそんな事は……」 「無いって言える?」 動揺を隠しきれず、言葉に詰まってしまう。 否定したいが、気がつけば彼の事ばかり考えていたのは事実だ。けれどそれを素直に肯定できるほど怜旺は素直ではないし、それ以前に二人に見透かされる程態度に出ていたと言う事実が何とも居た堪れない。 「……別に寂しいとか、そんなんじゃない。 なんでアイツが来ないからって俺が寂しくならないといけないんだ。大体、学生の本分は勉強なんだから学校くらいちゃんと来いよって思ってるだけで……」 思っても無い言葉が口からついて出る。 こんなことが言いたいわけじゃないし、こんな言い方をしたかったわけでもないのに……。どうしてこうなってしまうのか自分で自分が嫌になる。 「……ふーん?」 しかし、そんな怜旺の気持ちなど知る由もない麗華は、ニヤニヤと面白そうに笑みを湛え、怜旺の顔を覗き込んできた。 「アタシはちょっと寂しい、かな。正直圭斗が何日も休むなんて思って無くってさ……。あんな事があってもアイツの事だから学校には来ると思ってたんだよねぇ。だから、ちょっと意外だった」 そう話す麗華の表情何処か少し寂しそうにも見える。

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