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絶望 7

だが危機には変わりないし、今頃圭斗はあの女と……。 圭斗が誰かに盗られるなんて、そんなのは嫌だ。  「だからさ、あんな奴忘れて僕達も気持ちい事しようよ? 先生が大人しくしてれば悪いようにはしないって」 耳にかかる吐息が気持ち悪い。耳元で甘く囁くような声に嫌悪感が全身を覆い、嘔吐感が込み上げてくる。 拒否する間もなくはだけた胸元に手が滑り込んで来て、外気に触れた乳首がフルリと震えた。 「なぁ、都築。ごちゃごちゃ言ってないで早くヤろうぜ? 俺もう待てねぇよ」 目の前にいる口にピアスを開けた男が鼻息荒くそう言いながら、怜旺のボトムのウエストを寛げて下着に手を掛ける。 「んん!!! く、……ぅうっ!」 「たく、わかってるってば。ねぇ、先生。あんまり暴れない方が痛くないと思うよ? お互い、気持ちよくなるためだけの行為なんだからさ。それとも、乱暴に扱われるのが好きなの?」 都築はにやりと笑うと、唇が触れそうなほど顔を寄せて来た。近づかれると、整髪料なのかワックスなのか、シトラスの香りが鼻をくすぐった。 「椎堂君にも抱かれてたんでしょう? だったら僕とも出来るよね?」 「ッ! んんっ!!」 耳元で都築の生暖かい吐息を感じて、全身の肌が粟立つ。 「ほんっときれいな肌してる。ずっと思ってたんだ。この肌に触れてみたいって」 うっとりとした口調でそう言うと、都築はナイフを持っていない方の手で怜旺の胸もとに触れた、わざとらしく乳首を強めに抓まれて痛みにびくりと身体が跳ねた。 「あぁ、ごめんね。痛かった? 舐めてあげるから許して?」 ぬるりとした舌が、痛みに痺れた部分を舐め上げる。舌先で弾くようにされてゾワゾワと不快感ばかりが募った。 それを合図に正面に居た男が怜旺のボトムを下着ごと引き摺りおろしにかかるが、雨で湿ったズボンは脱がせにくいらしく腿の辺りまで下げたところで苛立ったように足を持ち上げられ、中途半端に脱がされ局部だけを露出させられ、足を開かされた。 「あー、なんか全部脱がすよりこっちのがエロく見えんな。こっちも具合よさそ」 いうが早いか、唾液で濡らした指をグッと後孔に差し入れて来た。 ぐっと中で指を折り曲げられ反射的に力を抜いた。 「ぅ、っ……ぐっ、う」 こんな状況でも、簡単に身体の力を抜いてしまうなんて……。何度も、何度も繰り返してきた行為だ。不本意だが、身体は勝手に受け入れ態勢を作ろうとしてしまう。 「都築、お前こんなエロい先生に教えて貰えるとか最高かよ」 好き勝手な事を言いながらチュッと、音を立てて腿にキスをされ、身体がびくっと動いた。その拍子に怜旺のボトムからポケットに入れていたスマホが床に落ちる。男はそれを拾い上げると 「せっかくだし、写真撮ってやるよ。その椎堂って彼氏? に、見せてやれば?」 そう言って無遠慮に怜旺の後孔に指を出し入れしながら、スマホを構えた。 ニ、三度シャッター音を響かせる。指を咥えたままの蕾を写されていると思うと羞恥で気が狂いそうだった。 気持ち悪くて反吐が出そうだ。身体は上手く受け入れようとしているが、心はそんな気にはなれない。 いつの間にか男の指は三本に増えており、それを怜旺の内壁を嬲るように蠢かせていた。 身体は相変わらず冷え切っているのに、奥の熱だけはずっと燻り続けている。その中途半端な刺激と屈辱感がまた更に不快感を募らせていった。

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