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光明 2
連れて来られたのは圭斗の家だった。傷付いてボロボロの姿の怜旺を気遣ってか、圭斗は一言も発さず怜旺を風呂場に押し込む。
熱いシャワーが冷え切った身体に心地いい。頭から被って漸く緊張が和らいできて、目頭がジワリと熱くなった。
ずっと泣くまいと堪えて来た感情が、湯の温かさで決壊したように溢れてくる。
「……っく……」
熱いシャワーに混じって堪えきれなかった涙がボロボロと零れ落ちた。
怖いと言う感情は無かったが、とにかく悔しくて堪らなかった。
肌身離さず身に付けていたブレスレットはもうない。とても大切にしていたものだったのに。
せめて、車内に散らばった球の一つだけでも拾って来ればよかった。
あんな男たちに好き勝手させてしまった自分が不甲斐なくてたまらない。悔しさでまた涙が溢れて来て、腕で目を擦る。
こんな情けない所、圭斗にだけは見せたくない。つまらないちっぽけなプライドが頭をもたげる。
涙を誤魔化したくて、風呂から上がるとタオルで身体を拭って急いでスウェットに袖を通した。圭斗の服なのだろう、自分には大きくて袖や裾がかなり余っている。
「風呂、サンキュ」
「あぁ」
タオルを頭からかぶり、泣いていたのがバレないように俯き加減で声を掛けた。
圭斗は、風呂から出た怜旺を見るとホッとしたように表情を崩した。その表情を見た途端、また心臓がぎゅうぎゅうと締め付けられる。
あんなに酷い目に合ってもまだこの男を好きだという想いが溢れてくる。
「……これ、どういう意味だ?」
目の前にスマホを差し出されて、画面を覗き込んだ。それはホテルの前で怜旺が圭斗に向けて発信したメッセージ。
あの時は、混乱して裏切られたという思いが強くてとても冷静ではいられなかったが、改めて圭斗に突きつけられると胸に苦いものが込み上げて来る。
「自分の胸に手を充てて考えたらどうだ?」
あの時の気持ちを思い出すとまた目頭が熱くなってくる。それを悟られたくなくて圭斗に背を向けると。後ろから強く抱きしめられた。
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